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イタリア旧国鉄が取り入れる
IoTによる予測メンテナンスのすごさ

末岡洋子
【第134回】 2016年11月4日
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列車内で実際の温度、スピードなどのデータを見ることができた

 センサーの数は500~1000程度、毎秒5000シグナルが生成されており、これを特別なアルゴリズムを用いて分析する。ここでは以前から業務アプリケーションを利用しているSAPの「SAP HANA」を利用した。SAP HANAはメモリにデータを置くことで高速に分析できるのが特徴だ。Trenitaliaでは6TB級のインメモリデータベースを構築し、列車からのデータに加えてその他のシステム診断や検査情報を分析にかける。過去のデータを分析して修理が必要と思われる兆候があれば、担当者にメールやテキストメッセージで通知がくる。

全列車のリアルイムの状態が一目でわかるDMMSの管理画面

 フル稼働となる2018年~2019年には、データセンターのストレージ容量は年間1ペタバイト程度に達すると見込む。データが増えれば増えるほどシステムの精度もあがり、利用するアルゴリズムも増えていく。また、車両の屋根の状態など、センサーでは取得できない情報もあり、これについては車庫に入る列車の画像をカメラでキャプチャし、異常がないかを調べるようなことも考えているという。

センサー情報を他の情報システムと連携

TreitaliaのCIO、Danilo Gismondi氏

 「5000万ドルを投資するプロジェクトになる。だが、得られるものはそれを上回ると期待している」とCIOのDanilo Gismondi氏はいう。まずはメンテナンスコストの削減。年55億ユーロを売り上げる同社にとって、メンテナンスは大きなコスト項目の1つだ。年間約13億ユーロの予算を設けているメンテナンスコストを、DMMSにより最終的に8~10%削減できるとみる。金額にして1000万~1300万ユーロとなる。これに加えて、年1000万~2000万ユーロという遅延が関連した損失も削減できるほか、スペア部品のストックや人件費も削減できると見る。電車の運行を改善できるため、顧客体験の改善にもつながる。

 このプロジェクトはTrenitaliaにとって、単なる予測メンテナンスにとどまらない一大ビックデータプロジェクトとなる。センサーからの情報は将来的にメンテナンス以外にも利用していく、とCEOのBarbara Morgante氏は言う。財務、CRMなどのシステムと連携させ、外部データの取り込みも進める。これによりトラフィック制御、顧客との関係強化につなげるほか、新しいサービスの可能性も考えているようだ。「データが何をもたらすのかを期待している」とMorgante氏は述べる。

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末岡洋子

すえおか・ようこ/フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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