ネットでエロ本やDVDを大量注文!
家族は疲弊するばかり

 施設利用高齢者による“ネットストーキング”はスタッフだけに留まらない。他の利用者にも及ぶ。母親を週に3回、デイ・サービスに預けているという専業主婦女性(44)が語る。

「施設では利用者は、皆、名札をつけています。その名札の苗字を手掛かりに、まず付き添っている私のSNSアカウントをヒットさせたそうです。その私のSNS上にアップした母と私の写真を他の利用者男性がダウンロード。タクシーに乗り運転手に写真を示して我が家までやって来たことがあります」

 苗字や、施設側が保有する自動車での送迎場所などから他の利用者の個人情報を類推することは可能だ。断片的でもこうした情報を基に、タクシーに乗り、運転手に伝えれば他の利用者女性の自宅に行くことができる。戸建て住宅に住み珍しい苗字であれば、さらに絞り込みやすい。この専業主婦宅はこれらの条件を満たしていた。前出の専業主婦女性が続けて語る。

「年齢が年齢なので、母とその利用者男性がどうこうなるとは思っていませんが…。ただ、その利用者男性のご家族が気の毒としか言えません」

 ネットを介した高齢者の“問題行動”はストーキングだけではない。子どもや孫のスマホから、クリックひとつでネットショッピングで買い物するという事案も頻発しているという。

「ネット書籍から、注文した覚えのない本が何冊も届きました。いわゆるエロ本とDVDでした。調べてみると私のスマホを父が無断使用、そこから注文したものでした」

 こう語る大阪府内に住む公立中学校の男性教諭(46)は、この一件を早速、デイサービス利用している施設側に相談したが、そこで思いもかけない事実を耳にする。男性が続けて語る。

「施設内で時折、エロ本を持ってくる利用者男性がいるそうです。それを他の利用者に見せびらかして盛り上がるとかで…。まるで中学生のようなノリだそうです」

 この高齢者、とりわけ認知症患者によるネットを介した無断取引の事案は、高齢者を介護する家族側にとって、「支払える程度の金額」であれば、まだ対応可能だが、高額商品や取り消しが効かないものの場合、その対応にも限界がある。前出の男性教諭は言う。

「母親使用のパソコンを介して、何度も同じ電子書籍を勝手に注文されたこともありました。気づいたのが遅かったので取り消しもできません。パソコンにロックをかけていなかった母も悪いのですが…。正直、家族側の対応にも限界があります」

 こうした高齢の認知症患者が引き起こす“小さな事件”を、厚生労働行政はどう見ているのか。厚生労働省に聞くと、「現状では、高齢者、認知症患者問わず、そうした統計も取っておらず、また政策の打ち出しもありません」。

 “事件”ということならばやはり警察庁か。しかし、警察庁も「現状では、認知症、高齢者といった詳細な統計は取っておりません」と話す。

 行政としても、現時点では、まだ「打つ手なし」といったところか。今、全国で約462万人にも上っているといわれる認知症罹患者だが、厚生労働省の調査によると、現在、65歳以上の高齢者では4人に1人が罹患しているという。

 2025年には罹患者数は700万人を超えるとの試算もある。今後、認知症罹患者はますます増えゆくことが予測されるが、認知症罹患者による“小さな事件”に、社会はどう対応するのか。介護する家族の心労を慮った「迷惑を掛けあう」ことを是とする寛容な社会か。行政の采配に期待する「迷惑を掛けない」社会を目指すか。私たちはその選択を迫られている。

※本文中、カタカナ名は仮名です。