>>(上)より続く

 こうした横内氏の活動について、暴力被害を受けたことがある看護師は、次のように述べている。

「看護師は、今までは患者のカラダとココロの状態に配慮し、どんな仕打ちを受けても我慢しなければならないと考えていました。でも、渉外室から度を過ぎた患者さんには勇気を持って毅然とした態度を取るべきと、背中を押され警察に届け出をしました。病院は、私たちを守ってくれているんだという気持ちになっております(看護経験15年以上)」

モンスター化させる一因は病院にも
重要なのはコミュニケーション

 横内氏は、慈恵医大に詰めるようになってからの1年間で、現場では対応できず、院内交番や総務課等に持ち込まれたクレーム304件の内容を調査した。

 結果、内容別で最も多かったのは、病院側の言葉が足りないケースなど、インフォームドコンセントに関係するもの。2番目は医療者の「態度・言葉」、3番目が「処置・手技」に関するものだった。

「例えば、『待ち時間が長すぎる』、『医療費の計算ミスを指摘したのに、謝罪の言葉がなかった』、『先生の説明が、専門的過ぎて分からない』、『職員の態度が冷たい』とか。これらがクレームのもとになっており、患者さんをモンスター化させる一因は、病院側にもあると感じる場合が少なくありませんでした。やはり職員の皆さんも、患者さんへの対応をちゃんと考えるべきだと思います」

 病院は、慣れない人間にとっては難しい場所だ。どこで受付したらいいのかからして分かりにくい。「○○検査室で○○してから、○○科へ行ってください」と言われても院内の構造が複雑すぎて迷ってしまう。採血一つしてもらうのにも、ただ待っていれば順番が来るのではなく、その都度受付しないといけない。分からなくて手続きをしないでいると、いつまででも待たされる。看護師に尋ねようにも、「忙しいオーラ」全開で、取りつく島がない。

 加えて、高齢者の場合、複数の診療科にかかっていることが多いので、大変さは数倍にもなるだろう。