受動喫煙の論争のいま

 受動喫煙を巡って、今、国とたばこ会社が正面衝突している。国立がん研究センターと日本たばこ産業(JT)の大論争が勃発した。海外では見られない、日本の特殊事業が裏にあると言わる。

 国立がんセンターが8月31日に、受動喫煙による肺がんのリスク評価を従来の「ほぼ確実」から「確実」に引き上げた。日本人を対象にした疫学的研究では統計的優位性が示されなかったため、「ほぼ確実」の段階にとどまっていた。新たな研究で、受動喫煙で肺がんになる確率が1.3倍になることが確認できたので「確実」とし、海外のレベルと並ぶことになった。

 これに対して、JTは同日に自社ホームページで小泉光臣社長によるコメントを発表し、真っ向から反論した。「本研究結果だけをもって、受動喫煙と肺がんの関係が確実になったと結論づけることは、困難であると考えています」「今回の選択された9つの疫学研究は研究時期や条件も異なり、いずれの研究においても統計学的に有意ではない結果を統合したものです」。

 今度はがんセンターが9月28日にJTの言い分をことごとく反論した。今でもホームページ上で掲載している。その最後に、JTのコメントにある「JTは周囲の方々への気配り、思いやりを示していただけるよう、たばこを吸われる方々にお願いしています」との言葉を捉え、「受動喫煙は『迷惑』や『気配り、思いやり』の問題ではなく、『健康被害』『他者危害』の問題である」と一蹴した。

 JTがこれだけ強気になって国立機関に刃向う構図は異常と言えるだろう。その力を支えているのは、「財務省のグループという意識があるから」と指摘する声がある。確かに、「日本たばこ産業株式会社法」による特殊会社としてJTは存在しており、その第2条では「政府は、常時、日本たばこ産業株式会社が発行している株式の総数の3分の1を超える株式を保有していなければならない」とされている。会長の丹呉泰健氏は元財務事務次官である。

 といって、財務省と厚労省の「喧嘩」にしてしまってはかなわない。多くの医療関係者が論争に加わり、早めの決着を期待したい。