どうやら日本人でも喫煙習慣で平均10年は寿命が縮むようだ。英国医学雑誌「BMJ」に掲載された長期追跡調査の結果から。
研究では、1950年に広島と長崎でスタートした原爆の影響を追跡した調査の参加者から対象者をピックアップ。63~92年にかけて喫煙データが得られた男性2万7311人、女性4万0662人を平均23年間追跡した。参加者を喫煙経験が全くない、過去に喫煙経験がある、現在も喫煙中の3グループにわけて比較している。
解析のコアになった20~45年に生まれた世代(中央値33年)は喫煙開始年齢が20歳以前と若く、1日の喫煙本数は男性が平均23本、女性は17本。およそヘビースモーカーとはいえないが、現役の喫煙者は全く喫煙経験がないグループと比較し、男性の死亡率が2.21倍、女性では2.61倍に達し、死亡年齢では男性8年、女性で10年もの差が生じたのである。
解析結果から、35~44歳の間に禁煙すると、死亡リスクが1.06~1.4までに改善されることも判明している。なんとか35歳までに禁煙できればギリギリ非喫煙者並みに、45歳までなら余計な死亡リスクをまぁまぁ回避できそうである。
過去にも厚生労働省の研究班で喫煙と寿命の関係が調査されているが、そこでの喫煙-非喫煙者間の平均寿命の差は男性で3.5~5年程度だった。本調査の研究者は、これまでのデータは喫煙開始年齢や喫煙習慣が現代と異なる古い世代を対象としたもので、喫煙リスクが実態より少なく見積もられてきた可能性を指摘している。
この数年、日本人のタバコ離れは急速に進み、全男性の喫煙率は35%を割り込んだ。ただし、それを牽引しているのは家計と健康を気にする高齢者。30代男性では40.4%が、40代男性は39%が喫煙している(2012年。日本専売公社・日本たばこ産業調べ)。肺や食道など喫煙関連がんだけをみても、喫煙開始年齢が早く、喫煙年数が長いほど発症リスクは上昇する。45歳以降も喫煙を続けるなら、10年を失う自覚が必要なのだろう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)