「後ろから見て、美人かと思って前を見たら残念だった。」という話をよく聞く。たしかにそういうこともたまにはあるが、実はしっかり見ていればそういう「残念」は少ない。

 何をしっかり見るか。それは服の折り目や皺である。美人の着ている服はそれが実にきれいなのだ。もちろんクリーニングをしたら、いい折り目はつくだろうし、変な皺は消える。しかし、それだけではない。クリーニング後、着るまでにきちんと伸ばすところは伸ばしているのだ。クリーニングから帰ってきた状態で着る直前まで放置しないのだ。

 差が出るのはむしろクリーニングしなかったもの。つまり洗濯し、たたんでおいたもの。これが上手にたたんだのであろう。余計な折り目や変な皺がないのだ。上手なたたみ方を身につけているのだと思う。きれいにたたむ行為は「美人のもと」を増やしていくはずだ。

 丁寧に洗濯し、丁寧に干し、丁寧にたたむ。きれいに着るための意識を持っている。同じ服でもそれだけで服の印象はかなり変わるものだ。

 いい服なのに、着ている人になじんでいなかったり、やたら目につく折り目が入っていたりする人がいる。適当にたたんだのだろうなと思える人。「美人のもと」が減っている人が多い。

 無地なのに妙な線が入っている。柄が湾曲している。チェックの色が干渉している。描かれた笑顔のキャラクターが泣いているように見える。折り目が変色している。ほつれた糸がブラブラしている。

 せっかく気に入って買ったのに台無しにしている。きれいにたたむという意識があるだけで気に入ったままの素敵な服でいられるのに。

 いい加減にたたむ瞬間に「美人のもと」が減っているのだろう。

 着るときにきれいな線をつくるという意識さえ持っていれば、服をたたむ行為も面倒ではなくなる。むしろ楽しくなる。アイロンがけも楽しくなり、結果として上手な仕上げが身につく。そして、きちんと服を見ているので、ほつれや穴などを発見しやすい。すぐに対処できる。

 服の折り目は生き方の象徴なのかもしれない。