「友達」はいらない!認知症も怖くない?精神科医が教える「AIで老後を幸せにする方法」写真はイメージです Photo:PIXTA

長生きするのが楽しくなる時代は、すぐそこまで来ている。道に迷っても、薬を飲む時間を忘れても、うまく話せなくても、AIがサポートしてくれるのだ。高齢者専門の精神科医による、「老後を楽しむための厚かましいAI利用」のススメをお送りする。本稿は、和田秀樹『AIを賢く利用して 老後を図々しく生きる』(日本実業出版社)の一部を抜粋・編集したものです。

老後が不安になるのは
喪失体験が増えるから

 シニアのみなさんが将来を不安に感じるのは、「長生きしたところで幸福になれない」と思うからではないでしょうか。若い頃のように体の無理がきかなくなる、友人や家族が亡くなる、耳が遠くなる、歯が抜けて好きなものが食べづらくなる……。次々と「喪失体験」ばかりが増えていくなかで、先の希望が見えなくなってしまうのです。

 特に、親や配偶者の死は人生において最大ともいえる喪失体験です。精神医学では、愛する対象の喪失がうつ病の最大の要因だともいわれています。60代を過ぎると親の死と直面することが増えますから、自らの老いに加えて大きな喪失体験が重なり、ダメージも大きくなりがちです。

 精神科医の間では、定年後にうつになる人が非常に多いというのもよく知られています。人生で多くの時間を仕事に費やしてきた人ほど人間関係も仕事のコミュニティに依存していますから、定年退職した途端に人付き合いが激減することが大きな理由です。特に日本の男性は、飲み会やゴルフなど会社関係の付き合いが多いために、定年退職が大きな喪失体験となる場合が多いのです。

 仕事は自己愛を満たす場でもあります。活躍して自分の存在を認めてもらうことはもちろん、出世して社会的に高い地位を得れば、周りもちやほやしてくれますし居心地もいいでしょう。ところが、定年退職で会社を離れれば環境はがらりと変わります。ご近所付き合いには今まで築き上げた地位など関係ありません。無力感に襲われ「自分は社会に必要とされないのだ」とふさぎ込みやすいのです。

 このように、次々と大きな喪失体験が襲ってくる高齢期は、老後を悲観的にとらえてしまうかもしれません。しかしながら、できることはたくさんあります。

失った過去に執着せず
今できることに目を向ける

 ささいなことであってもプラス体験を増やして脳に刺激を与えれば、人生の見え方も変わってくるものです。クヨクヨしても、お気楽に過ごしていても、人生はいつか必ず終わりが来ます。どうせ死ぬのなら、不安にとらわれずに幸福に生き切ったほうがいい。私自身、そう考えています。

 喪失体験が重なる高齢期に大切なのは、失ったものやできなくなったことに執着しないことです。他人や過去の自分と比べてイライラするよりも、今あるもの、今できることに目を向けたほうが精神的にストレスを感じずにすみます。