TPPは野党の強硬な反対が続いたが、ようやく国会承認を得た。国会が空転したのは、世界の大きな潮流を理解しない、愚かなことだと考える。元々、TPP参加を決めた当の本人のはずの野田佳彦民進党幹事長(元首相)が先頭に立って「次期米国大統領候補がTPPに反対していて、米国が批准するかどうかわからないのに、なぜ日本が先にTPPを批准する必要があるのか」「政府が『聖域』とした農業などの国益が守られていない」などと批判を続けたのは、狂気の沙汰だ。

 小さな日本という島の中で、こんな重箱の隅の問題に難癖をつけて争っている場合ではないのが現実だ。農業を「聖域化」して「国益」だという。平等な国際競争の条件下で、農業の競争力を高めることは大事だ。だが、わずか200万人の農業を何としても死守するために、平等な競争を求める自由貿易の枠組を否定することが「聖域」というのは、もはや「カルト宗教」の域である。

 そんなことより、何度でも繰り返すが、「自由貿易体制」を守ることこそが、日本の絶対的に死守すべき「国益」である。日本は、TPPを承認し、なんとしてもこの枠組みを維持するために米国を説得する以外に、生きていく道はないということを知るべきだ。

国際政治学の権威は完全に失墜し
「常識」が全く通じない時代が到来

 トランプ氏が大統領選に当選した夜、いろいろなテレビを観て、インターネットの評論を読んでいた。そのほとんどの識者が非常に意気消沈しているのが印象的だった。多くは、クリントン氏の勝利を予想していた。しかし、それは実は予想ではなく、クリントン氏に勝ってもらわないと困るという「願望」に過ぎなかった。換言すれば、トランプ氏の勝利で起こるだろう大きな変化から顔を背けてきたのだ。

 あえて大胆に言えば、この1日で、国際政治学のすべての権威は失墜した。これからは、なにが起こってもおかしくない時代になった。権威も、しきたりも、常識も全く通用しない時代になった。自分の頭で考えていくしかない時代だ。

 最後に、常識に捉われず、これから考えるべきことを1つ提示したい。トランプ氏は、「日本の核武装を容認する」と言った、初めての大統領候補だった。前述の安全保障に関する発言も併せて考えれば、「戦後、初めて日本の『完全独立』を容認する大統領」が現れるのだといえる。もちろん、ここまで論じてきたように、日本にとって大きなリスクだ。しかし、大きなリスクだからこそ、頭を使い、知恵を絞れば、これまでにない巨大な好機が訪れるといえるのかもしれない。今こそ、常識にも権威にも捉われず、日本はどうすべきか考え抜く時である。