さらにいえば、英国の製造業は、軍事大国のベースを生かし、民間航空企業や空軍、陸軍、海軍の装備を製造しているBAEシステムズ、航空宇宙エンジン、発電システムを製造するVTグループ、GKN、ロールス・ロイスなどのハイテク企業が世界的に高い競争力を誇っている。英国は、単純に「安売り競争」をやっているわけではない(第43回)。

EU離脱で中長期的には
むしろ英国に資金が集まるようになる

 金融については、前述の通り、短期的にはポンドが暴落するような事態が想定される。それはその通りだろう。しかし、中長期的にみれば、EUから離脱することによって、むしろロシアや中東、そして、EU圏内の富裕層からの資金は、これまで以上にシティに集中し、結局ポンド高になるのではないだろうか。

 なぜなら、シティは規制が少ない上に、英国は世界中にタックスヘイブンを持っているからだ。筆者が英国にいた頃から、中東・ロシア、そしてEU圏から規制が多いユーロを避けて、ロンドンに資金が集まっているという実感があった。

 実際、この連載ではウクライナ問題での西側諸国のロシアへの経済制裁に関連して、プーチン大統領や政府高官には、ロンドンに巨額の不正蓄財の巨額の蓄えがあるとの「噂」があることを取り上げた(第77回)。

 また、中国共産党幹部が、香港にペーパーカンパニーを設立し、巨額の貯蓄をしているという「噂」や、英領ヴァージン諸島に資金を移して、マネーロンダリングをしているという「噂」も取り上げた(第91回・P.7)。これは、「パナマ文書」が公開されたことで、単なる「噂」ではないことが明らかになったといえる。

「パナマ文書」によって、タックスヘイブンに対する規制が厳しくなるというかもしれないが、文書が明らかにしたのは、世界中のタックスヘイブンのごく一部でしかない。世界中に点在する英国領のタックスヘイブンはいまだブラックボックスのままで、規制しようとしてもできるものではない。従来から、金融規制が緩い英国領には、世界から資金が集中する傾向があったといえるが、EUの金融規制から解放されることによって、増々資金が集まりやすくなる可能性があるのではないだろうか。

「英連邦」が凄まじく巨大な
経済圏として出現する

 そして、英国が持っている「英連邦」という巨大な「緩やかな国家連合体」の存在を軽視してはならないだろう。英連邦には54ヵ国が加盟している。国連に次ぐ規模を持つ国家連合だ。世界のほとんどの宗教、人種、政治的思想をカバーしている。