あんの・ひであき
1960年、山口県生まれ。学生時代から自主制作映画を手掛け、その後TVアニメ『超時空要塞マクロス』(82年)、劇場用アニメ『風の谷のナウシカ』(84年)等に原画マンとして参加。88年、OVA『トップをねらえ!』でアニメ監督デビュー。95年にTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を手掛け、97年の『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』と共に社会現象を巻き起こす。98年、『ラブ&ポップ』で実写映画を初監督。2006年、株式会社カラーを設立し、代表取締役に就任。自社製作による『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ(07年~)では、原作、脚本、総監督、エグゼクティブ・プロデューサーを担当している。最新作は脚本・総監督を務めた実写映画『シン・ゴジラ』(16年)。 Photo by A.S.

 当初は、スタジオではなくて個人事務所レベルを考えていました。轟木(一騎取締役)と2人で、東京・西新宿の雑居ビルに事務所を借りてスタートしました。それも固定費を抑えたかったからです。資本金は1000万円ですが、初期費用も掛かり、轟木の給料も資本金から支払っていて、いつまで持つのかなという状況でした。

 ですが、映画製作を始めると、スタジオにせざるを得なくなりました。スタジオにすると、スタッフの数が増え、規模もどんどん大きくなっていきました。今では社員が50人弱、会社にいるスタッフを合わせて100人程度の会社になりました。

──自然に、ですか。

 ええ、自然になっていったという感覚です。当初から経済的な面、つまりキャッシュフローを意識していましたし、採用で無理をするつもりもありませんでした。

 このようにできたのも、作品が当たったからです。最初の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の製作において100%出資し、この作品が興行収入20億円を超えたので、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』が作れました。これも興行収入40億円と当たったので、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(興行収入53億円)につながりました。

コスト意識を常に持ち続け
勝ち続ける「2番手」になる

──自主制作は、実入りが大きい分、当たらなかった場合の経営リスクも高いです。そのため現在は、リスク分散のために、複数社の出資を募る製作委員会方式が主流です。アニメ制作会社は通常10~20%程度の出資比率といわれる中、なぜ100%出資のリスクを取れたのでしょうか。

 それはエヴァのタイトルのおかげです。コンテンツとして大丈夫だと感じていました。しかも、最初はそれほどお金を掛けていないのです。「このぐらいならば投資を回収できる」という、最低のリクープライン(採算ライン)で作っています。

 興行収入が入ることで次の作品の製作費を少し潤沢にすることができました。さらに次の作品が当たったのでもう少し製作費に回すことができた。そうして、投資と回収を繰り返すことで、会社を伸ばすことができ、スタッフの報酬を少しは増やすことができたのです。