7年前の2004年のことだ。山東省青島市を訪問した私は、早朝の飛行機に乗り、渤海湾を隔てた大連に移動した。
予約している宿泊先のホテルである大連スイスホテル(現・大連瑞詩ホテル)に到着したのは9時半頃だった。持っていた荷物をホテルに預けてから予定している企業訪問をしようとホテルのフロントに立ち寄った。
フロントの女性から「お客さんがチェックインなさるのですか」と聞かれ、早朝でもチェックインできるんだ、と心から自分の幸運を喜んだ。きっとホテルの客室が空いているのだろうと思った。チェックインの手続きをしながら、女性は無線通話機で客室係を呼び出した。「掃除済みですぐに利用できる客室はありますか」と確かめているのを聞いて、びっくりした。客室係の返事を確かめてから、女性は申し訳なさそうに私に向かって謝ってくれた。
「昨日はホテルが満室だったため、今のところは掃除が終わった部屋がまだありません。あと15分ほどお待ちいただけたらご利用できます。それまでラウンジでコーヒーでも飲みながら待っていただけませんか」。そう言いながらコーヒーの無料券を渡してくれた。
私はすっかり感動した。同行した妻に中国でこんなホテルのサービスを受けられるとは信じられないと感想を述べた。
7年の歳月が経った今でもこのことは鮮明に私の記憶に残っている。しかし、それでもその思い出はどことなくセピア色の写真のようなものにすこしなりかけていた。その記憶の写真を焼き直すかのような出来事が今週の中国旅行中に起きた。