しかし、その頼みのGMが2008年のリーマンショックの影響で翌年に経営破綻した。米政権の救済を受ける事態に陥ると、GMとの提携を解消し、トヨタとの資本提携に動いた。結果的にこの10数年間で、スバルの経営はめまぐるしく変遷した。

 いずれにしても、トヨタグループ入り(トヨタ16.48%出資)してからは、米国工場SIAにおける自動車生産に加え、トヨタ車のOEM生産で稼働の安定化が図られた。国内ではトヨタとスポーティーカーを共同開発(「BRZ」と「トヨタ86」)し、生産は富士重工業の群馬工場で行い、市場投入する体制へと結びつけた。

 ようやくにして、トヨタグループ入りでスバルは「集中と選択」経営戦略に思い切った舵取りができるようになり、それを決断してきたのが吉永現社長である。

NAFTAの見直し問題に
生産倍増と雇用拡大の計画に影響はあるか? 

 トランプ次期米大統領の誕生が決まって1週間、財政拡大などへの思惑から米長期金利が上昇した。株式市場では金融株などが値上がりし、16日の外国為替市場で円相場が一時、1ドル=109円台後半に下落した。円安・ドル高の流れが続いているが、先行きは不透明だ。

 自動車業界にとって米大統領選でトランプ氏が勝った後に始まった円安傾向は、うれしい誤算だが、これが来年1月20日のトランプ政権移行後も継続するかどうかの見極めは難しい。むしろ、トランプ氏が出馬会見で語った「彼ら(日本)は、100万台以上の日本車を送ってくる。我々(米国)はどうだ?最後に東京でシボレー(GM車)を見たのはいつだ?彼らはいつもアメリカを打ち負かしてきた」との1980年代を彷彿させる保護主義傾斜への懸念である。

 とくに、問題はNAFTA(北米自由貿易協定;1994年発効)の動向だ。NAFTAは、米国とカナダとメキシコ間で成立している無関税による北米市場での生産・供給体制を推進させてきた。これにより、日産・ホンダ・マツダがメキシコ工場からの米国供給を積極的に展開している。さらにトヨタはこの11月14日にメキシコ新工場の起工式を行ったばかりだ。日本車だけでなく、ダイムラーは日産と共同生産し、BMWも。さらに米メーカーのフォードもメキシコ工場を主力生産の基地化を行っているほどである。

 トランプ氏の「メキシコに国境の壁を作る」という発言は、メキシコに米国の雇用を奪われたことが根底にある。これは人種差別的言動にも繋がり、政権移行後のNAFTAの見直しがあれば、日本車ばかりでなく自動車業界全体の問題となる。

 一方でスバルは、米国でのスバル車の快調な売れ行きに対応して米国生産拠点(SIA)での生産能力の大幅増強を進めている。今年、7月からトヨタの受託生産が終了した旧カムリラインで「スバル・アウトバック」の本格生産を開始した。さらに11月から北米向け「インプレッサ」の生産を日本から米国に移管し、生産能力を増強させている。これにより来年から米現地生産を現行の年間20万台から年間40万台体制に倍増させる計画である。現地のサプライヤー側も生産倍増に対応しようと、品質を守る体制を進めている。