受話器に天然皮革を採用したアマダナの電話。手に吸い付くような感触と、使えば使うほど馴染んでくる天然素材ならではの質感を味わえる
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今、日本の家電が変わってきている。テクノロジーがフラット化し、オーバースペックを指向してきた日本のものづくり神話が崩壊しつつあるのだ。それと同時に “過剰サービス”を売りにしてきた日本全体の会社経営・働き方にも変化が求められている。

ソニーや日本トイザらスをはじめ様々なトップ企業で重役を歴任し、現在、「美しいカデン」をキャッチフレーズに掲げるデザイン家電ブランド“amadana(アマダナ)”を展開する株式会社リアル・フリート会長、小寺圭氏はその変化をどう見ているのだろうか。

日本の家電業界は異常!? ソニーから、
家電業界へのアンチテーゼとしてのアマダナへ

こでら・けい
1946年生まれ。ソニー株式会社において中近東、アジア、ヨーロッパに駐在しマーケティングに関する要職を歴任後、ソニーマーケティング株式会社社長、ソニー・チャイナ会長を経て、2006年より2008年まで日本トイザらス社長兼会長を歴任。2010年12月より現職

南 早速ですが、小寺会長はソニーという大企業で役員職を多数経験されてから、アマダナという規模の小さなベンチャー企業へ転職するというユニークなキャリアをお持ちです。どういったお考えで転職されたのでしょうか?

小寺 ソニーを辞めたきっかけでもあったのですが、家電はどんどん変わっていくと私は思っていたのです。そして、日本の電機業界がものすごく異常だということに気づきました。

 具体的に言うと、日本は世界トップシェアの家電メーカーであるサムスンのテレビが1台も売られていない市場なんですよ。日本の家電メーカーは「クオリティを3%上げるために、30%のコストをかける」なんて揶揄されますが、つまりはオーバースペック・オーバークオリティなのです。

 たとえば、カメラにいろいろな機能がついているけれど、本当にその機能が必要かということです。そして商品は高く売っているけれど、その分、コストも高い。でもデフレのため高いと売れないから安く売って、みんな赤字になっている状況が、今です。

 そして日本の家電メーカーはロジスティクスもサービスも製造も全部取り込んで巨大な組織でモノを売っている。しかし、会社というのは大きくすればするほど、リスクに対して弱くなってしまう。