あなたは「仕事」と「家庭」を両立できているだろうか――。「ワーク・ライフ・バランス」という言葉に注目が集まって久しいが、仕事と家庭の両立は、未だに多くの男性・女性にとって大きな課題だろう。そうしたなかでも、家事や子育てをしながら、仕事で大きな成果を挙げてきたのがネットイヤーグループ石黒不二代社長と今回の対談相手である東レ経営研究所特別顧問の佐々木常夫氏だ。

佐々木氏は、自閉症の長男をはじめとした3児の父。そして妻がうつ病を患うなかでも家族を守り、仕事に全力で取り組んだ結果、2001年に東レ同期トップで取締役に就任、2003年には東レ研究所所長となった。一方の石黒社長も長男を連れてスタンフォード大学に留学、その後起業するというキャリアの持ち主である。

家事・子育てをしながらも、経営者という立場で活躍し、仕事で成功するために、2人はどのような経験や努力をしてきたのだろうか。型破りな方法で現在の地位を築いてきた両者の対談を聞くと、なぜ日本では仕事と家庭の両立が難しいのか、その理由と日本社会が抱える根深い問題点が見えてきた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

なぜシリコンバレーでは
「仕事」と「子育て」が両立できるのか

ささき・つねお/東レ経営研究所特別顧問。1944年秋田市生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年東レ入社。病に倒れた妻と障害のある子どもを抱えながら仕事と家庭生活を両立させ、2001年、東レ同期トップで取締役となり、03年より東レ経営研究所社長。10年より現職。家庭と仕事を両立するビジネスマンの象徴的存在。近著に『働く君に送る25の言葉』(WAVE出版)がある。
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――お2人とも家事や子育てをしながらも仕事に取り組み、大きな成果を挙げていらっしゃいました。実際に仕事と家庭を両立させるため、どのような工夫をしてこられたのでしょうか。

佐々木 子どもを育てながら仕事をしていたと言っても、私がしていたのは一部のことですよ(笑)。

石黒 一部と言っても3人のお子さんの子育てや奥様のご病気のことがあったなかで、仕事で大きな成果を出されたわけですから…。基本的には、普通の方のプラスアルファのことをなさっていたに違いない。

佐々木 まあ、やったといえばやっていたんですけど、「ええ加減」にやったんですよ(笑)。手抜きでやったんだ。

石黒 いえいえ、そんなことは私など、「日本では子育てをしながら仕事はできない」と結論し、環境の異なるアメリカに行ってしまった口です。アメリカには、日本社会にあるいわゆる「子育てをしながら仕事をすること」への明文化されていない“プレッシャー”みたいなものが全くありませんでしたね。