これはワインやアートの事業にも共通している点だが、ただ単に「預かって保管する」で終わらせないのが寺田倉庫のすごいところだ。ワインの場合はユーザーの興味関心に合わせた投資セミナーを開催し、預かったワインの価値を高めるための環境づくりの一環として山梨大学と共同研究にも取り組んでいる。アートの場合は、展示するためのギャラリー、希少性の高い画材を集めたラボを併設するなど、モノの付加価値を高めるための幅広いサービスを横展開している。

 ミニクラも、預かった品物をユーザーが自分で管理できるばかりか、オプションサービスを利用してクリーニングに出したり、出品手数料なしで「ヤフオク」に出品したりすることができるなど、最初から拡張性の高いサービスとしてデザインされている。ヤフオクに出品した場合、落札後の配送もミニクラのスタッフが担当してくれるため、一人暮らしの女性などは落札した相手に住所を知られずに送ることができる、というメリットがある。

 今度は、柴田さんに向かって尋ねた。

――ただ、現場は大変そうですね。

ミニクラの専用ボックス。ツワモノのユーザーは、箱の空間いっぱいに商品を詰めて送ってくるそうだ

「そうなんですよ。現場ではお預かりした品物を撮影した後、バーコードを付与して管理しています。その際に傷をつけたりしてはいけないので、洋服の場合ですと、ボタンホールや洗濯タグのところに紐をつけて付与したり、本の場合は紙を帯のように巻いて、その上から貼ったりしています。

 じつは、システム上の入庫処理をした後、商品を再び箱の中に戻して保管するのですが、これがけっこう大変で(笑)。ユーザーさんは損をしたくないですから、箱の空間ぴっちりに商品を詰めてこられる。なので、商品を戻す際に、苦手なスタッフがやると入らなくなっちゃうことがあります。サービスを開始してから4年が経ちましたので、スタッフもだんだんと熟練してきて、かなり上手に詰め直すことができるようになりました」

 アナログの写真を預けた場合、それをスキャンし、デジタル化して届けてくれるサービスもある。入庫処理の際、カテゴリに分類してから保管するため、そのカテゴリに応じてユーザーにオプションサービスをリコメンドできるのだ。

 ということはつまり、もしかすると、寺田倉庫は和製アマゾンなのか?

 月森さんがすぐさま反応した。

「(ITを活用していても)事業の肝の部分は人力にある」と月森さんは力強く語る

「まさしくそうです。アマゾンも、じつは倉庫業の免許を持つ巨大な物流企業ですから。我々も本当に、肝の部分は人力なんですよ。

 これまで倉庫業で培ってきた経験の蓄積を、いかにITを使って事業化し、おもしろくしていくか。お客さんを引きつけるのはシステムの使い勝手だったり、ユーザーインターフェイスだったりというITの部分なんですが、それを底辺で支えているのは、倉庫で働く現場の人たちの力なんです」