1995年4月に1ドル=79円75銭まで円高が進んだとき、ソニーやホンダは本社を海外に移すのではないか、というジョークが一時期、流行したことがあった。95年当時はその後、円安に戻ったので、この話はジョークとして終わってしまった。

 ところが、ここへきて再び急速な円高である。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が日本国債を格下げしたことで、ひょいと円安へブレたが、平均的な為替相場を考慮すれば、いまだにキツイ円高状態だといえるだろう。ソニーやホンダだけでなく、多くの企業にとっても、「ジョーク」を真剣に検討しなければならない時期に差し掛かっているといえるかもしれない。

 今年の初め、百戦錬磨の機関投資家の方々と筆者とで会食した折、円高ドル安を一気に解決する策を議論したことがあった。その1つに、ニッポンがアメリカ合衆国に対して宣戦布告を行ない、その直後、白旗を揚げて51番目の州に組み入れてもらうのはどうだろうか、という案が提起された。

「憲法9条で『国の交戦権』が否定されているからダメだよ」と反論するのは優等生の回答だ。

 こういう場合、アメリカのほうから敗北宣言をしてきたらどうするんだ? 一気に50もの都道府県が増えては、暗記できないぞ。高校野球のセンバツ出場校を選ぶのが大変だろう、と心配顔をするのが、正しいジョークの対処法なのだそうだ。

ユーロ建にも対応できる
経営指標「為替レート限界率」

 冗談はさておき、これから迎える11年3月期決算に向けて、新興国需要に支えられて業績を上方修正すべきなのか、それとも円高の影響を折り込んで下方修正とすべきなのか、頭を抱えている企業が多いことだろう。ただし、少なくとも為替相場の影響について参考資料となるのが、第49回コラム(電機業界編)で紹介した「為替レート限界点」だ。

 そのときに利用した図表に、今回はソニー、富士通、NECを加えたものを〔図表 1〕に示す。