しかし、ぜひ理解していただきたいのは、この酷い状態は抗がん剤の「副作用」であり、一時的なものだということ。乳がんと診断された女性は「私にはもう価値がない」などさまざまな負の感情に襲われる。いや、女性に限らず自分の存在価値が脅かされる恐怖は皆同じだろう。その際、本人の納得がないままの配置換えなどは「無用の人間」と追い打ちをかけるに等しい。逆に「仕事が待っている」と思えば、治療に向き合う気力もわいてくる。一時の状態で就労不可と評価せず、治療が終われば元の有能な部下や同僚が戻ってくると信頼し、待っていてほしい。

 診断・治療法の進歩で乳がんは必ずしも致死的な疾患ではなくなった。むしろ、治療中やその後の人生への影響のほうが深刻かもしれない。生きがいやセルフイメージを保つために、できる限り仕事を続けるよう勧める医師も多い。社会参加は、乳がん患者にとって、もう一つの治療薬なのだ。