2005年の福知山線事故から6年。信頼を回復し、低収益時代に備えるために佐々木隆之社長が打ち出したのは、地域との共生と現場重視。JRらしからぬ作戦の数々で、官僚体質からの脱却を狙う。
(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)

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──これまでの中期経営計画とのいちばんの相違点は。

 今回の計画は、2008年に作ったものを見直したという位置づけではあるが、ほとんど新規に作ったといっていい内容だ。

 ただ、これまでと変わらないのは、安全性のさらなる向上と、ご被害者への対応。今回も経営の3本柱に据えている。

 安全投資を増やすなど、考えうる限りの対策を講じてきた。成果が出てきている部分もあるが、まだまだ不祥事や事故を連発しており、やるべきことは山積みだ。

 一方、これまでと違うのは、会社としてどう生き残っていくのか、何を重要視するのかという基本を明確にしたところだ。以前は、売上高をいくらにするといったような、計数的な計画しか作ってこなかった。

 やはり鉄道会社なのだから、沿線地域との共生なしでは成り立たない。そして、鉄道会社の仕事の9割を担っている現場。この二つをきちんと柱に据えたうえで、具体的な戦略を練った。