「うちの子、全然勉強しない」と悩んでいる保護者は多い。特に男の子の場合、「勉強しなさい」と言えば言うほど、やる気をなくしてしまうものだ。しかし、『男の子の学力の伸ばし方』の著者・富永雄輔氏は、男の子には「動機づけ」よりも「ルール化」が効くと説く。男の子の脳の発達特性に合わせた学習法を実践することで、どんな子でも必ず学力は伸びるという。本連載では、本書の内容から、子どもの計画・理解・反復・習慣のプロセスを体系化した「男の子の特性」に基づく学習法をお伝えしていく。(構成:ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

勉強をサボって絵を描く少年Photo: Adobe Stock

男の子は「幼稚園児レベル」と心得よ

 小学生の男の子を持つ親なら、誰しも一度はこう思ったことがあるだろう。「どうしてうちの子は、言われなければ勉強しないのか」と。

 本書には、男の子は女の子と違って、小学生でも幼稚園児とあまり変わらない幼さがあると書かれている。だから、親も幼稚園児を相手にするくらいのつもりでいる必要がある。

 これは脳科学的にも裏付けがある。脳科学の専門的研究では、女の子は右脳と左脳が早くからバランスよく育つのに対し、男の子は右脳ばかり先に発達し、左脳は遅れることがわかっている。

 言語能力を司る左脳の発達が遅れた男の子が、なかなか国語の長文読解をできないのは当たり前なのである。

この時期の男の子に自主性を期待したりしないこと。とくに父親は、会社の部下に接するかのように「おまえは将来どうありたいんだ」と問い詰めたりしますが、相手は幼稚園児レベルなのだということを忘れてはなりません。(『男の子の学力の伸ばし方』より)

 一方で女の子の場合、「○○中学の制服がかわいいから着てみたい」といった具合に、今の学習態度と受験の動機が少なからずリンクしている。

 しかし、「僕は医者になりたいから勉強する」というような男の子は非常にまれだ。

 そうでないからといってがっかりする必要はなく、「男の子はそういうものだ」と思ってルールづくりに徹しよう。

勉強とご褒美をセットにする

 では具体的に、どのようなルールをつくればよいのだろうか。

 著者は、子どもが自ら勉強するようになるために、最初は親がルールをつくってあげる必要があると述べる。かつ、やったことに対してご褒美を伴わせると効果的だという。

 たとえば、「勉強を1時間やったら、テレビを30分見ていいよ」と、勉強とテレビをコインの表裏のように用いる。

 もちろん、おやつでも漫画でもいい。子どもが喜ぶことの前に勉強をセットして「勉強したら楽しいことがある」と刷り込みをしてしまうのだ。

 それにしても、どうしてここまでやらなくてはならないのだろうか。それは、「サッカーやりたい」「ゲームしたい」など、この時期の男の子の「望み」が、勉強とは関係のないことが多いからである。

男の子は、いい目標になる兄がいるようなケースならいざ知らず、たいてい「○○になりたい」というものは持っていません。
無理に「動機づけ」するのはやめて、勉強をルール化してしまいましょう。(『男の子の学力の伸ばし方』より)

 ここで大切なのは、動機づけに時間をかけるのではなく、勉強そのものを日常のルーティンに組み込んでしまうことだ。

 朝起きたら顔を洗うように、夕食の前には宿題をするように。生活の一部として習慣化させることが、男の子の学力を伸ばす第一歩となるだろう。

「勉強しなさい」は禁句

 ルールをつくったら、次に親がやるべきことは何か。

 それは、「勉強しなさい」という言葉を極力呑み込むことである。

 男の子の「やる気スイッチ」を探してイライラしても仕方ない。なにしろ、勉強するのは本人なのだから。

 いつまでもグズグズしている男の子を見れば、「早く勉強しなさい」と言いたくなるだろう。しかし、それを言えば、たいていこう返ってくる。

「今やろうと思っていたのに、言われたらやる気がなくなった」

 だから、「勉強しなさい」は極力言わずに、子どもを勉強へと誘導する仕組みをつくってしまおう。

 たとえば、机の上に5分くらいで解けるごく簡単な教材を並べておく。簡単なので子どもはそれに手を伸ばし、解いているうちにエンジンがかかってくる。あるいは、本人が好きな教科からやらせるのもいいだろう。

 男の子は、エンジンがかかりにくい半面、一度かかるとグワーッと進む傾向にある。だから、「勉強しなさい」でエンジンを冷え込ませるよりも、とにかく1センチでも動かすことを考えよう。

ウォーミングアップで頭を温める

 スポーツでも、ハードな練習は最初は誰もしたくないものだ。

 でも、ウォーミングアップをして体が温まってくると、だんだんやる気も出てくる。それに、いきなりハードに動けばケガのもとだから、やはり「徐々に」が肝心である。

 勉強も同じで、準備体操が必要だと著者は述べる。最初は子どもが手を動かしやすいことから始めよう。

 手を動かしているうちに頭の血も巡り出し、もっと難しい内容へと移行しやすくなる。親は、このウォーミングアップの手伝いをしてあげればいいのだ。

 具体的には、こんな工夫が考えられるだろう。

 ・前日の復習プリントを1枚用意しておく
 ・計算ドリルの簡単なページを開いておく
 ・好きな科目の教科書を机の上に置いておく

 こうした小さな仕掛けが、男の子の学習を軌道に乗せる助けとなる。

習慣化が将来の財産になる

 本書全体を通して著者が伝えているのは、どんな子でも必ず学力は伸びるということだ。

 そのために最も重要なのは、「できなかったことが、自分の工夫や努力によってできるようになるという経験」を積ませることである。

 そして、子どもたちに「学習習慣」が身につくことが、何よりも嬉しいことだと著者は語る。学習習慣は一生ものの力だ。

 幼少期から勉強する習慣が身につけば、大学受験も、働き始めてからの勉強も苦にならない。人生100年時代といわれる今、柔軟なキャリアチェンジを可能にするのは学習習慣である。

 それは決して一朝一夕では身につかない、その後の人生における最大の資産となるだろう。自ら学び、成長できる習慣は、持って生まれた頭の良し悪しに左右されず、社会をたくましく生き抜く力となるはずだ。

 男の子の特性を理解し、ルール化とウォーミングアップという具体的な仕組みを取り入れることで、親子のストレスを減らしながら、着実に学力を伸ばしていくことができるのである。