本書によれば、これからは未来に向けて社会を変革する「ソーシャルイノベーション」を念頭においた「ワクづくり」へのシフトが必要になる。

 そこで求められるのが「イノベーターシップ」だ。著者の一人、徳岡晃一郎・多摩大学大学院研究科長は、イノベーターシップを「何がよいことかを大きな目的意識のもとで明確にし、新しい社会を構想し、そこへ向けて自分のなすべきことを、既存の組織、役割や資源にとらわれること無く、主体的に実践していく力」と定義している。

 世界を変えたいと本気で思い描き、未来社会とそこに至るシナリオを構想。そして、それらを実現するのに邪魔なルールをつくり変え、必要なルールを新たにつくることもいとわない。

 そんなイノベーターシップこそがルールメイキング戦略を進める原動力となるということだ。

 テスラモーターズを率いるCEOのイーロン・マスク氏は、何もトヨタを蹴落とすためにEVの開発を進めているわけではないだろう。トヨタのプリウスのようなハイブリッド車はガソリンエンジンも使うため、化石燃料の使用がゼロにならない。EVならば、再生可能エネルギーを使用することで、化石燃料をまったく使わないことも可能だ。そうすれば、未来の地球環境のためになる。

 マスク氏は、そうした信念に基づき、イノベーターシップを発揮しているのだ。そしてそのイノベーターシップが、2018年からのZEV規制強化というルールメイキングにつながった。

 日本の産業界も、このようなイノベーターシップを発揮できる人材を積極的に育てていくべきだろう。そうした人材が、日本のみならず世界のより良い未来を実現するルールメイキングに貢献するはずだ。本書は、そんな構想の良き出発点となるだろう。

(文/情報工場シニアエディター 浅羽登志也)

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