幼少期から「読書習慣」を身につけさせる
2つ目は「視野を広げる」こと。
若い頃から視野が広く、自分の強みと弱み、好き嫌い、価値観を理解できている人は、将来の職業選択において天職に近づきやすいとキム氏は言う。言い換えれば、いい大学、いい会社だけを目標とする偏差値エリートは視野が狭く、自分への理解も浅いので、自分の適性を全く無視した分野に進み、迷走しがちであるということだ。
「各界のビジネスリーダーが親に感謝している教育を論じるとき、特に『幼少期からの読書習慣』を身につけてくれたこと、と答える人が驚くほど多かったですね。読書はその人の知識や考え方を豊かにし、広い視野とリーダーシップを育てます。」(キム氏)
だが残念なことに、パンプキン氏にはここでも失敗談があった。
「長男はザリガニと熱帯魚に夢中で、上二人の娘たちが読んだ本にはほとんど関心を持ちませんでした。私も『読みたくなったら読めばいい』くらいに軽く考えていました。けれども振り返ってみると、各々の子の成長段階に応じて、その子の関心に合わせて本を選び、与えることが大切だったと思います。少しの時間でも、読書を通して息子たちの関心ある世界を一緒に楽しんでやればよかったと悔やまれます。本を通じて生涯の師に出会えたという人もいるくらい、読書が与えてくれる世界は広く、大きいものです」
また、子どもが自分から興味を持ったり、夢中になる対象が、学校の勉強や習い事とは直接関係ないことでも、親は大いに歓迎すべきだとパンプキン氏は助言した。
「自分からやりたがることは、出来る限り体験させ、伸ばしてあげてください。子どもは自分の興味を追求する過程で、責任感や自主性など、多くの力を身につけます。そして、好きなことを満足がいくまでできていれば、他にやらなければならないことへのモチベーションも生まれてきます」
広い視野という意味では、海外体験を通じた多様性教育も重要だが、身近なところでその機会は得られるとキム氏は指南した。「私の場合、中高時代、郷里である京都の祇園祭りで外国人観光客の道案内をしていたことが原体験となっています」
グリット(やり抜く力)はこうして伸ばす
そして、3つ目は、昨今話題の「グリット」(やり抜く力)である。
「何かをやり遂げる人の共通の動機は、それを『自分が始めた』ということです。そして最後までやり遂げる人には『失敗も糧にする』という思考回路が備わっています。失敗からどう立ち直り、そこからどういう生き方をするかというポジティブな思考ができる育てられ方をしているのです」(キム氏)
家庭教育の調査を通じ「自分で始めたことを途中で辞めさせなかった親への感謝」を挙げている人がことのほか多かったという。多くの親が「途中で投げ出すとそれが癖になり、自分で妥協点を勝手に見つけ、全て中途半端で終わらせてしまう人間になるから」といって、子どもの弱音を受けつけず、怠けた時には厳しく叱咤激励した。このように育てられた子どもたちは、初志貫徹する習慣を身につけていったのだ。
「ただし、親は子どもが失敗しても感情的には怒ってはいけません。原因を考えさせ、自分で乗り越えるのを助けるのです。そうすれば、子どもは失敗を恐れず、次にチャレンジする強さをも身につけることができます」(パンプキン氏)