「世界中のビジネスリーダーの働き方」を見てわかったこと

 そして、かつてのわんぱく坊主のキム氏も、今や世界を股に掛けて活躍するグローバルエリートだ。彼もまた、東洋経済オンラインの人気連載「グローバルエリートは見た!」を通じ、世界中のエリートの働き方をつぶさに観察しながら感じることがあったという。

「必ずしも、高学歴エリート=仕事で活躍し、幸せな人生を送れている人、というわけではありません。いい大学、いい会社に入れたというだけで終わってしまい、仕事で活躍できず、充実した人生を送れていない人も大勢います。一方、同様のバックグラウンドでありながら、自分のやりたいことをやり、リーダーシップを発揮し、主体性溢れる幸せな人生を送れている人も数多く存在します。

 果たしてこの差はどこから生まれたのか。さまざまな業界の第一線で活躍する多くの人々と話す中で、それは『主体的に幸福な人生を切り開ける子ども』を育てる育児法にあるのでは、と思い当たったのです」

 そこでキム氏は「親に最も感謝している家庭教育方針」について、200を超える家庭事例から調査した。この200人を超える事例は、単に高学歴というだけではなく、起業やNPOでの活躍など、さまざまなリーダーシップを発揮した大学生と、ビジネス・政治・医療・メディアなど、多様な分野の一流のリーダーたちを対象に行ったものだ。

「その結果、自由回答形式であったにもかかわらず、育った場所や世代を超えて、回答内容に高い共通性が見られたのは驚きでした。これを分類したものから『その子どもに当てはまる内容』をヒントに、『育て方』への目線を上げられる子育ての参考書のようなものを作ろうと思い至りました」

幸福な人生を切り拓ために最も大切な3つのこと

 そうして書かれた『一流の育て方』は、そのタイトルから、我が子を「高偏差値、高学歴で有名企業に勤める」という意味でのエリートに育てるノウハウ本と誤解されやすい。しかしキム氏は「本書の内容はその正反対。学歴・偏差値偏重の教育では、受け身の偏差値エリートに成り下がり、幸福な人生の準備としては全く不十分」と強調した。

 では、いい大学、いい会社に入って終わらない、その先で自己実現し、幸福な人生を切り開けた人々に共通した「親へ感謝したい教育方針」とはどのようなものだったか。

 回答内容は大きく7つの方針にまとめられているが、講演では、特に重要と思われる3つに着目した。

まず1つ目は、「主体性」だ。7つの方針の中で最も大事と言っても過言ではない、とキム氏は第一にこれを挙げた。

「『自分にとって何が大切で、自分は何が好きで、何をしたいのかを常に問い続ける教育』を受けてきた人には主体性とリーダーシップが備わっています。いつも上司の判断を仰ぎ、周りが同じ意見であるかが判断基準の人では、単なる組織のコマで終わってしまいます。主体性を育まれてきた人は、周りに流されず、リスクがあっても自分の確固たる基準でぶれない決断ができるし、他人と違っても不安を感じることはありません」(キム氏)

 一方でパンプキン氏は、悔やみきれない猛省の思いを語った。

「自主性を育む上で、私は子どもたちの自立の機会を奪ってしまいました。忙しさのあまり、子どもが失敗から学ぶことを待てずに、身の回りのことを全部やってしまう『過保護』な育児でした。さらに習い事も親である私が勝手に決めていました。親に無理やりやらされていると思っているうちは、何をやっても主体的に取り組まないものです。たどり着きたくもないゴールに向けて自主的に努力する子どもはいません。親は選択肢を示したり、知識やアドバイスは与えるにせよ、最終的には子どもの意思を尊重し、選択を子ども自身に任せることによって、主体性とリーダーシップを身につけさせることができるのです」