飼育責任者の話では、オスのトップを入れ換えても、群れにさしたる影響はない。しかし、メスの順位が入れ替わると、群れはいっとき不安定になることがあるという。改めて調べると、今西錦司全集(講談社)におさめられていた『ニホンザル研究の現状と課題』にも、こう書いてあった。

「見かけはいかにも強力なオスの独裁制のようにみえるかもしれないけれど、ちょっと中をのぞけばこのように、メスが社会に及ぼしている影響には、そのよし悪しはべつにして、なかなか侮りがたいものがあるのを知るのである」

 どんなに屈強なオスも、メスに認められなければボスにはなれない。オスどうしの競争に勝ったサルがボスなのではなくて、メスに好かれたオスがボスなのである。

自炊も得意なオバタさんが
還暦を過ぎても独身でいる理由

「たとえば、このスパークリングワインですが」とオバタさんが持ち込んだワインを片手に、説明する。

「アルコール分が12.5%ということは、一本飲むと、だいたい600キロカロリーという計算になります」

「詳しいですね」と感心していると、「計算だけはできますからね」とにっこり笑う。要するに、「頭で理解していることと実践できることは別だ」と言いたいらしい。

 酔った勢いに任せ、ずっと聞きたかった質問をオバタさんにぶつけた。

「これまで、結婚しようと思ったことはなかったのでしょうか?」

 彼はしばらく宙を見つめ、直接質問に答える代わりに、筆者にこのような問いを返してきた。

「買い物をしながら、あれこれ迷うことってありませんか?」

「おおいに、あります」

「そうやって迷っているうちに、欲しいモノがなくなっちゃうこと、ないですか?」

「………結婚も、それと同じですか?」

「…………違うかな」

 要約すれば、「いいな」と思う人はいたけれど、さりとて「結婚しなければならない」という衝動に駆られる訳でなく、1人でいることも苦にならなかったため、マメに相手に尽くすこともないまま現在に至ったとのこと。「結局、相手の方から選ばれなかったんじゃないかな」とぽつり言い、オバタさんの恋愛話は終わった。