現在の就活を巡る議論のほとんどは、多くの大学生が「就職することができない」「就職活動に苦戦し、学業がおろそかになる」といった、就職弱者にスポットを当てたものになっている。しかし、それらの事の本質は、大卒労働市場の量的・質的変容によるものであり、企業の求人状況や選考方法などの「就活そのもの」に起因するものではない。

就活に対するステレオタイプな
認識を改める必要

 確かに、卒業しても就職も進学もしていない新卒無業者は近年再び増加し、2010年卒では卒業者の16%に及んでいる(学校基本調査/文部科学省より)。就職氷河期の再来と叫ぶ声が随所に上がっている。

 しかし、2011年卒の大卒求人予定数は、実は氷河期ピークの1996年卒の1.5倍もある。今は主要企業が採用を凍結したような当時とは様相が異なるのだ。また、数年前に比して求人数が激減したことは事実だが、リーマンショック以前の新卒求人状況が、バブル期を上回る状況だったことに起因するものであり、また、求人倍率がその時期にさほど上昇しなかったのは、バブル当時に比べて大学生の数もこれまた1.5倍に膨れ上がっていたからだ。

 また、無業者、あるいはフリーターになっていく人の中には、働く意欲が低く、就職活動の波に乗って行けない「就活諦観層」も少なくない。対人、対自己などの基礎力や主体性、好奇心などのキャリア・アダプタビリティが十分に形成されていないためだ。企業が採用を絞り、意欲ある若者が就業機会を失しているというステレオタイプな認識は改める必要がある(図表1)。