徹底して女性を守る飛田
配られる「飴」の意味とは

 スマホ片手に一人様子を窺っていた記者に、近隣住民と思しき年配の女性がこう声を掛けてきた。己のうかつさと非礼を詫びる記者に女性は続けてこう語った。

「店(いわゆる“料亭”のこと)を撮るんやったら、女の子写さんといたってな。朝早くやったら店も閉まってるし怒る人もおらんやろ……」

まるで警察署のような雰囲気を持つ、飛田新地料理組合。飛田新地の秩序や働く女性たちのプライバシーを守る役割を果たしているという

 地域住民や飛田事情を詳説したいくつかの書籍によると、飛田で写真撮影をすると、即、「飛田新地料理組合」の自警団がやってくるという。

 これは近隣女性が言うように「(飛田新地で働く)女性たちのプライバシーを守る目的」に尽きる。

 そうこうすると、東京からやって来たという入社同期という女性3人組と遭遇、「女性から見た飛田新地」について話を聞くことができた。

「ひとつの通りを歩いてみたのですが、おばさん方から怖い目で睨みつけられました。物見遊山で女性が来てはいけない場所なのですね。ここは……」

 3人組の1人が話すと他の2人が大きく頷く。事実、飛田での遊びに精通した男性らの話を総合すると、“料亭”で働く女性への配慮から、観光や冷やかし目的の女性の立ち入りは歓迎されないのだそうだ。そして、「客として、女性が“料亭”に上がることも認められていない」(地域住民男性)のだという。

 徹底して、そこで働く女性たちを守る飛田の街は、いつ訪れてもゴミや吸殻ひとつない整然とした街並みが保たれている。しかし内と外を繋ぐ、「嘆きの壁」の階段には、無数の「飴」によるものと思われるシミや、飴の欠片が落ちている。

 この飴は“料亭”を後にした客に配られるもの。「もう帰りです」というサインとして用いているもので、飛田新地内にある4つの通りを飴を舐めて歩いていると、遣り手婆も客引きの声をかけることはないという。

「いや~。良かったです!20分でしたが、めちゃ長い時間に思えました!」

 先ほど見かけた、「男になりにやってきた」名門大学生だった。

「僕が『まったくの初めてです』とゆうたら、おばさんもお姉さんも親切にしてくれましたわ。お姉さん、めっちゃ頑張ってくれたみたいです。今日はもう寝れませんわ!」

 そう語る彼もまた、棒付きの飴を舐めていた。「バイトしてまた来ます!」という彼の話によると、“料亭”では、短時間ゆえにとても情熱的な自由恋愛が繰り広げられたという。

 時代を超えて、年齢問わず熱心なファンが訪れる飛田新地だが、記者が確認した限りでは朝は10時から、夜は24時まで“料亭”が開いている。今日も大勢の男性が「自由恋愛」を求めて飛田へとやってくる。