寿命が延びたからこそ生じる、仕事、キャリア、生きがいの問題に、いま、わたしたちはどう向き合うべきか。実は半世紀も前に、ドラッカーのアドバイスは用意されていた。
1970年代に収録されたドラッカー本人による「幻の研修テープ」が、このたび、初めて書籍化された。計3回にわたって『われわれは いかに働き どう生きるべきか』の内容紹介、および、本文の一部を無料公開する。
自らの経験に「飽き」が来るほど
長い時間軸のなかで
(Peter F. Drucker)
没後10年を超えたにもかかわらず、世界中から注目され続ける「知の巨人」「マネジメントの父」。「もしドラ」の題材となった『マネジメント』、IT起業家のバイブルとなった『ネクスト・ソサエティ』など、その著作は生涯で50冊以上にのぼる。
詳しくは、
ドラッカー日本公式サイト http://drucker.diamond.co.jp/
2005年11月11日にドラッカー教授が旅立たれて、はや12年になろうとしています。もう新たなメッセージに触れることができなくなった……と思いきや、サプライズがありました。
ドラッカー家の娘さんたちの手により、1970年代にドラッカー教授が出演した幻の研修カセットテープが見つけられ、ダイヤモンド社に送られてきたのです。
本書『われわれはいかに働き どう生きるべきか』は、その音源とテキストを初めて翻訳し、書籍化したものです。
聞いてみて、驚きました。
ご存じのとおり、もうここ何年もの間、高齢化社会の行方が論じられています。それは制度面のみならず、個々人の生き方をも揺るがすものです。寿命が延びたからこそ生じる、仕事、キャリア、生きがいの問題……いずれも人類(!?)が、初めて直面するものばかり。
むろん親世代の人生設計は参考にならず、解決策はいまだに見つからないままです。
ところが、ドラッカー教授は半世紀も前に、この未曽有の事態を予期していました。そして長い年月の隔たりを超え、示唆深い、しかし今なお役に立つメッセージを送ってくれています。
おそらく本書の読者は、仕事人として辣腕を振るい、家庭人・地域人として責任を持つ、マネジャー世代か多いことでしょう。
リタイアはまだ先の話であり、確たる見通しを立てづらい。一方、手にした知恵や経験と引き換えに、気力・体力は昔どおりとはいかず、働き方やモチベーションを維持する方法を見直さざるをえない……、そういう悩ましい局面を迎えているのではないでしょうか。
そのような社会の中核を担う世代に対し、ドラッカー教授は本書で、
・そもそも、すぐれたマネジャーはどのように考え・行動しているか
・部下に対して、上司に対して、同僚に対して、どのように対応するべきか
といった、お得意のセルフマネジメントにまつわるアドバイスのみならず、
・寿命が延びた時代には、どのような問題が発生するか
・自らの経験に「飽き」が来るぐらい長い時間軸の中で、キャリアとどう考えるべきか
・変化の激しい時代に対し、どのようなスタンスで生き抜くべきか
といった、いままさに懸案となっている問題について触れ、よき人生をいかに生きるかを示唆してくれています。
ドラッカー教授といえば、いつもは深淵かつキレのある論理的な文章で、私たちの視野を広げてくれています。しかし、今回は、対話形式で展開されているためか、いつもとはまた一味異なる、心に染み入る語りくちが印象的です。
生涯をかけて人間主義を追求した教授の、ふとした日常、温かなお人柄に触れることができたような、そんな気にさせてくれる一冊です。
それでは、次回より2回にわたって、本書の内容を一部公開していきます。
<第2回に続く>