昨年末以降、中国政府は経済対策の一環として、金融緩和を強力に推し進めた。上意下達で1~3月の銀行貸し出しは急激に増加。だが実体経済の需要がないままばらまかれたマネーは、各面に歪みをもたらした。当局と銀行が急ブレーキを踏み四月には異常値は解消したものの、不良債権化という火種が残る。

 「他行に比べ、おたくは融資が足りない」。2月、中国のある邦銀支店長は、日本の金融庁に相当する中国銀行業監督管理委員会(銀管会)の分局から呼びつけられ、叱責を受けた。

 1~3月、中国金融機関の融資額は空前の伸びを見せた。同期の新規貸出額前年比は347%。3月単月では、前年同月比で約7倍にもなった。むろん、過去最高の数値だ。

 背景には、政府がそれまでの引き締め策を転換し、経済対策の一環として金融緩和を推し進めたことがある。

 昨年11月の総量規制撤廃が表に出ている具体的な施策だが、むしろ効果を発揮したのは個別の銀行に対して行なわれた“窓口指導”だ。対象は規模の大小を問わず、冒頭のように外資銀行にまで及んだ。邦銀の場合は現地に進出している日系企業への融資が中心であり、貸し出しを増やしたところで中国経済に直接影響しないのだが、「中央の意向を受けた地方の担当者が、機械的に対応したのだろう」と関係者は苦笑する。

 実際にその意向を最も強く受けたのは、元国有銀行である中国銀行、中国建設銀行、中国工商銀行、中国農業銀行の「4大商業銀行」である。1~3月の新規貸出額で4行が占める比率は、前年同期比で13%増加し、51%となった。

 国営あるいは国が出資する銀行のなかには、さらに積極的に融資を伸ばしたところもある。結果、この期間の新規貸出額合計は4.6兆元(約64兆円)に及び、5兆元という政府の2009年の年間目標を、3ヵ月でほぼ達成してしまった。

突出する1~3月の貸出額

 ところが4月、状況は一変した。同月の新規貸出額は、前月比69%減と急減速したのだ。それでもなお、前年同月比で見れば27%の増である。1~3月がいかに異常な状況だったかがわかる。