CESの 「まるでモーターショー」は
あくまでも結果論

 年頭はITや家電の世界最大級見本市「CES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)」、そして北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)を巡るのが、2010年代に入ってから自動車産業界での常識となっている。

トヨタがCESで発表した、「コンセプト愛i」。人工知能により、車に感情を持たせるというイメージ Photo by Kenji Momota

 CES2017については、すでに日本のテレビやネットで詳細が報道されている。その多くが「まるでモーターショーのように、自動車メーカーの参加が増えた」と伝えている。

 だが、筆者はこうした表現に少々疑問を感じる。

 確かに、今回から日産、ホンダが出展したことで、トヨタを含めて日系ビッグ3が出揃った。しかし、この5年ほど「CESでの花形」として自動車部門をぐいぐいと引っ張ってきたアウディが姿を消した。また、コネクテッドカーの領域で、すでに30年近い実績を持つ車載システム「オンスター」を持つGMも消えた。そして、昨年は自動運転からドローン、さらに住宅とつながる音声認識技術まで、新しい技術には「マシンガンを撃つように片っ端から投資する」と社内で檄を飛ばしていたフォードは、出展しているものの、昨年までの勢いが感じられない。

ホンダのコンセプトモデル「NewV」。小型EVでライドシェアリングを想定。発表では、ホンダが人工知能など新分野で戦略的に挑戦すると宣言 Photo by Kenji Momota

 こうしたCES撤退または縮小組は、CES出展の旨味がなくなった、と見ているはずだ。なぜならば近年中に、自動運転やコネクテッドカーのアメリカでの量産が本格的に進むことが、ほぼ確実になったからだ。これまでのような技術のイメージ論や、企業PR的な宣伝ではなく、量産プロセスを本格的に始めようしているのだ。

 また、今回のCESで自動車が目立った理由は他にもある。それは、「他の分野で目玉がない」からだ。そのため、相対的に自動車が目立ったのだ。今年のCESでは、仮想空間におけるARやVR、ドローン、ウェアラブル、またヘルスケアなど、この数年CESの主役を演じた分野が、年次改良を加えてのキャリーオーバーに甘んじた印象が強い。