日本ヒューレット・パッカード(HP)社長から経営再建中のダイエー社長に転身し、現在はマイクロソフト日本法人の代表執行役兼COOを務める樋口泰行氏。その樋口氏が、ダイエー再生の修羅場で培った変革型リーダーの要諦を明らかにする。

ダイエー再生への構造改革

樋口泰行氏
 ダイエー再生に向けた施策は、バランスシート(BS)の改革と、損益計算書(P/L)の改革に大きく分けることができます。

 まずBSのほうは、バブル崩壊で毀損したバランスシートをきっちり正常化することによって企業価値を上げようという改革です。

 バブル期のダイエーは「資産価値は上がっていくものだから、借金をして資産をどんどん増やせばいい」という考えに基づいていました。当時は実に多くの企業が同じように行動していましたが、ダイエーの場合はそれが原因で立ち行かなくなったということです。

 ピーク時には約2兆6000億円もの有利子負債を抱えており、その後はたび重なる債権放棄を受けて、私の入社当時は5000億円台でした。現在では約1000億円と完全に正常化したので、本当に夢のような話です。産業再生機構や金融機関のご支援がなければ、どうにもならなかったと思います。

 これらの債権放棄に伴って、ダイエーでは様々な構造改革を実施してきました。

 採算性の悪い店舗はどんどん閉鎖していき、ピーク時に約380店舗あったものが、私の入社当時は約250店舗まで減少し、その後もさらに53店舗を減らして約200店舗まで体を縮めていきました。

 また、ハワイや中国などの海外事業からも撤退。リクルート株やローソン株、プロ野球球団やパチンコ事業など、小売りと親和性のない事業についてもすべて売却して、1円でも多く借金を返すことになりました。

 以前からこうした改革は進められてきましたが、産業再生機構が入ってその勢いに拍車がかかったのです。ちょうど地価が値上がり傾向だったこともあり、再生プラン以上に資産が高く売れたり、再生プラン以上に有利子負債を早く返せたりと、かなり順調に推移してきました。