ビニ本商売の後
何に手を広げたか?

 抜け目もない。村西はその後、違法である無修正の「裏本」の製作にまで手を広げるが、当初は捕まらない自信があったという。台湾でどんちゃん騒ぎをして仕事関係者一同で帰国した際も、羽田空港で捕まったのは関連会社の社長だった。なぜか。警視庁の裏本を取り締まる4チームに金をばらまいていたのだ。著者とのやり取りから、時代が違うとはいえ、想像を絶する警察とのズブズブぶりがうかがえる。

 “「あっち行ったりこっち行ったりして取締り側にカネを渡して歩くの。酒の飲み食いしてお付き合いしたら、その後で封筒渡すの」
  「年間六百万も渡すのは大変でしたね」
    「毎月ですよ、毎月」
    「毎月六百万!?」”

 本書は発売から2カ月弱経ったが、全国紙、専門誌、スポーツ紙、ビジネス誌の書評は沈黙を続けている。自腹で記事検索サービスで調べてみたが、書評として取り上げられた回数はゼロである。

 確かに、刑務所に入ったことはないとはいえ、前科7犯はまずいかもしれない。安倍晋三総理が真珠湾を訪れようとしているこの時期に、約30年前に真珠湾上空にセスナ機をぶっと飛ばし、『スカイファック』という作品を撮り、ミカンの皮と情事の処理に使ったティッシュを上空からばらまいたAV監督の評伝を大メディアが絶賛するのもまずいかもしれない。

 だが、戦後の困窮も高度経済成長もバブルもその崩壊も、IT革命も、体現して所持金1万4000円になってもくじけない不屈の男の一代記は一人でも多くの現代の日本のビジネスマンの目に触れてほしいものである。

(HONZ 栗下直也)

村西とおる、前科7犯・借金50億の波乱万丈物語