自分が未経験のポジションで
一流選手を育てるのが監督の使命

 管理職は、自分の仕事以外のことも見ないといけません。

 ときに、自分ができないことを部下に求めることもあります。

 もちろん、自分には苦手なことが、部下には楽々できることもあるでしょう。しかし、自分のコピーを育てようとすることで、その部下の能力を引き出し、生かすチャンスを、つぶすことさえあるのです。

 本田支店長は続けました。

「私は入社以来、営業しかやったことがないのに、支店長になったんだよ。しかし、支店長として、営業はもちろん、総務や物流、支店に関するすべてを見ている。課長も同じだ。自分のできることだけでなく、できないことでも部下に求めなければならないはずだ」

 プロ野球でたとえれば、すべてのポジションで活躍したことのある監督などいません。しかし、監督は自分が経験したことのないポジションでも、選手がそのポジションで一流になることを要求します。

 それが監督の使命だからです。

「部下を管理する」だけが管理職の仕事ではありません。

「部下を育てる」ことこそ、管理職がすべき、もっとも重要な仕事である。

 そのとき私は思い知りました。

 教え子が師匠より優れた人物になることを「出藍の誉れ」と言います。

 もとは「青は藍より出でて藍より青し」という古代中国の儒学者、荀子の言葉に由来します。青色は藍の葉を染料とするけれども、藍で染めた布は藍よりも鮮やかな青色になることからきています。

 自分よりも、もっと鮮やかな色で輝くように働いてほしい。

 以来、「出藍の誉れ」が、部下と接する際の私のモットーになりました。