最初に、今回の東北関東大地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、犠牲になられた多くの皆様に心からの哀悼の意を表します。
多くの被災者の方々が避難所で厳しい生活を強いられ、かつ福島第一原発で最悪の事態が起きないよう関係者の方々が連日命がけで奮闘されている中で、若干不謹慎であるとは思いますが、それらが一段落した段階での経済運営について考えてみたいと思います。
国民の不安心理
もちろん、経済運営で最優先すべきは被災地域に対する復興支援です。被害を受けた東北・関東地方の方々の人命と生活が何よりも優先されることは当然です。
しかし、それに加えて政府は、日本全体の経済運営も考えて行かなくてはなりません。その際、今後は二つの制約要因が存在することを強く意識しなくてはならないと思います。
一つは、国民の不安心理です。そうでなくとも過去15年にわたってデフレが継続した結果、消費者や企業の将来期待はかなり低くなっていました。来年が今年より良くなると思えないから、消費も投資も弱いままなのです。
そこに今回の大震災が起き、加えて東日本は原発のリスクや計画停電による混乱に直面していることを考えると、消費者や企業の心理はいっそう弱気になっているはずです。
そうした不安心理の高まりを反映して、全国で様々なイベントがキャンセルになっているのみならず、今週は多くの企業がオフィスを閉じ、東京の中心部では人通りがすごく少なくなっています。東京のスーパーやコンビニでも買い溜めが起きて、ミネラルウォーターや乾電池、パンやお米などが品薄になっています。
こうした消費者や企業の不安心理が長く続くと、経済にも当然悪影響が生じます。従って、その改善が不可欠であり、そのためには、福島第一原発の安全性が確保されることが最優先であることは間違いありません。
しかし、逆に言えばそれだけでは不十分ではないでしょうか。国民の予想を良い意味で裏切るほどの決意で、政府が被災地の復興とデフレの解消に全力で取り組むことが必要なのです。そのためには、大規模な財政出動と大胆な金融緩和が不可欠ではないでしょうか。