発生から1週間あまりが経過した東日本大震災。被害規模が過去最大ならば、経済に与える損失も膨大だ。生産設備の破損に加え、インフラ寸断、部品不足などボトルネックが引き起こす経済縮小の危機に直面している。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 大震災取材班)
※本記事は、「週刊ダイヤモンド」3月26日号(22日発売)の緊急特集「列島激震」からの先行公開第一弾です。第二弾は近日公開予定です。
経済損失は20兆円規模か
復興の財源に付きまとう不安
東日本での大震災を受けた週明けの東京市場は、市場関係者を青ざめさせるほど大荒れとなった。
14日に1万円の大台を割った日経平均株価は、福島第1原子力発電所の放射能漏れが明らかになった15日、前日比1015円34銭安の8605円15銭まで下げ、史上3番目の下落率を記録した。
一方、日本の投資家がリスク回避のために海外資金を引き揚げるのではとの懸念から円高が進行。地震発生前は1ドル=82円台で推移していたが、11日以降は81円台に水準を切り上げている(右のグラフ参照)。
こうした市場の動揺は、この震災が日本経済にもたらす衝撃の大きさを、まるで鏡のように映している。
今回、被災の中心となった岩手、宮城、福島3県の県内総生産の合計額が名目GDPに占める割合は4.1%。これは、阪神淡路大震災が発生した当時の兵庫県とほぼ同じである。
しかし、道路や港湾、住宅といった経済損失(資本ストック損失)は、少なくとも阪神淡路の2倍程度、額にして20兆円規模に上るとの見方がもっぱらだ。
というのも今回の被災地域は、阪神地域に比べ工場や商業施設の集積こそ少ないものの、範囲が広いためインフラの損害が甚大。津波で瓦礫の山と化した街は、地盤から造成し直さなければならず、損失は大きくふくらむ。
しかも今回は、「3県以外の東北地方や北海道の生産設備、インフラにもかなりのダメージが生じている」(河野龍太郎・BNPパリバ証券経済調査本部長)と見られ、さらに拡大する可能性も高い。
東京電力が、当面4月末までの予定で実施している「計画停電」も追い打ちをかける。東京電力の管轄地域は1都8県、日本のGDPの4割を占めるため、生産活動に大きな影響が出るのは必至だ。
「これらの地域の経済活動が25%前後抑制されるとして、1年間続けば全国のGDPは13%減少する」(同)。4月末まで1ヵ月と20日間だとして、1.8%程度GDPを押し下げる計算となる。
一方で、被災地復興に向けた財政出動も始まる。1年で5兆円投入されるとすれば、GDPを1%前後押し上げる効果があるが、差し引きで成長率は1%弱低下する。2011年度の政府の経済成長見通しは1.5%だったから、結果的に成長率は0%台半ばとなりそうだ。
ただ、こうした試算はあくまでも地震や津波、計画停電に限定したもの。原発の放射能漏れが深刻化すれば、11年度の成長率はまったく読めなくなる。