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国土交通省は12月11日、東京女子大学の竹内健蔵教授を座長とする有識者会議「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会第2回」を開催し、JR東日本、JR西日本、JR九州のヒアリングを実施した。主な論点になりそうなのが、JRがローカル線などの赤字維持の損失を補填する「内部補助」だ。JRは内部補助の拡大に警鐘を鳴らす一方、地方はネットワーク維持を前提にその継続を求めており、議論の行方が注目される。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
過去5年で急速に進展した
ローカル鉄道の維持・再生議論
ローカル鉄道の維持・再生に関する議論はここ5年で急速に進展している。2021~2022年にかけて開催された第1期検討会では、人口減少社会の中でローカル鉄道の置かれた現状について危機認識を共有し、相互に協力・協働しながら、利便性・持続性の高い地域モビリティを再構築していくための提言を2022年7月に取りまとめた。
これを受けて2023年に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」を改正し、ローカル鉄道の再構築を促進するための制度面・予算面の仕組みが整えられたことで、これまで19件の鉄道事業再構築実施計画が認定されるなど、具体的な取り組みが全国で進んでいる。
一方、法改正から約2年が経過し、JR各社のローカル線、地方私鉄で路線の存廃をめぐる議論が加速していることから、制度の拡充や全国鉄道ネットワークのあり方などについて、さまざまな意見が出てきている。
そこで第2期検討会では、ローカル鉄道を取り巻く現状についての地域の受け止め方を把握し、地域が望ましい公共交通を検討していくにあたり必要な情報、検討すべき課題を整理した上で、2023年法改正の総括と今後の在り方を議論することになった。
主な論点になりそうなのが「内部補助」だ。これは補助金など外部からの補助ではなく、同一事業者内において黒字部門の収入で赤字路線の損失を補填する仕組みを指す。新幹線や山手線など黒字路線とローカル線など赤字路線の関係を指すことが多いが、関連事業の黒字で運輸事業の赤字を補填する関係も含まれる。
内部補助は独占的に提供される公益事業で多く見られる。鉄道・バスの運賃や、郵便や電話料金、電気料金は、事業者内であれば同一条件で提供されるが、設備投資に係るコストは地域によって異なる。これを反映すれば料金は地域ごとに異なるはずだが、内部補助を行うことで、ユニバーサルサービスとして提供している。







