今「がん」に関する情報があふれています。芸能人でもがんを公表する人がいるため、ある意味、よく聞く病気になりました。しかし、情報があふれているゆえに、本当に正しい情報はなんなのか……迷う人が多いのも事実です。
そこで、がん患者さんに日々接している現役の国立病院の内野三菜子医師が、がんの主治医に聞きにくいようなことや、知っておいたほうがいいことなどを解説した本『身近な人ががんになったときに役立つ知識76』を発売。この連載では、その本の中から気になるところを紹介していきます。
新薬の中には1ヵ月分の薬代が
300万円を超えるものも?
Q がん治療はお金がかかるって本当ですか?
前回は、実際に治療でかかる費用と、イメージでかかる費用が、かなりギャップがあるということをお話ししました。
今回は、高額な治療となるケースをみていきましょう。
がんの治療費が比較的高額化するのは、がんのステージが進んだケースだと言えます。がんが進行しても効く、高額な薬が増えたからです。
進行しているがんは、手術や放射線治療などの局所治療に加えて、抗がん剤治療が併用されるケースが多くなります。これらの抗がん剤の一部には高額なものがあり、元の価格が高額であるため、「高額療養費制度」(収入に応じて、各月毎に支払う医療費の上限を超えた分は「高額療養費」で負担してもらえる制度。詳しくは本書)を使って、最終的には還付されたとしても、一時的に立て替えをして支払わなければいけないような状況があり、驚くこともあるかもしれません。
特に、最近マスコミなどを賑わしている高価な抗がん剤も幾つかあります。近年、医学の進歩によって次々と新しい抗がん剤が開発されていますが、そのなかでも、「分子標的薬」や「免疫チェックポイント阻害薬」のような新薬には、高額なものも出ており、なかには1ヵ月の薬代がベンツを一台買えるような金額となるものもあります。
もちろん、保険適用範囲内での使い方であれば1~3割の費用負担であり、さらに高額療養費制度も使えるわけですが、それでも元の金額が大きいですし、最低限の負担であっても、積み重なっていけば馬鹿になりません。
そもそも抗がん剤の基本的な治療方針は、治療結果の判定によって
「SD(症状が変わらず、悪くならない)なら使う」
「PD(がんが増殖した)なら、別の薬に変える」
というのが原則なので、薬の効果があればあるほど、治療期間は長くなり、見方を変えれば「終わりの見えない治療」が続きます。
治療が続いている以上は、健康保険が適用されてはいても、毎月一定額のお金が継続的にかかるようになり、累積した医療費はそれなりに高額化してしまうというわけです。
どんながんになるか、どの臓器のがんになるかによって使用する抗がん剤の種類も違ってきますし、それによって、医療費も大きく異なるため、かかる医療費の予測は難しくなります。