「がん」になったら、仕事はどうしよう、多額の治療費がかかってしまうのでは…と、心配する人も多いと思いますが、日本では公的な保障があり、多くの人を支えています。しかし、それらは申請しないともらえないものがほとんど。
現役の国立病院の内野三菜子医師が、がんの主治医に聞きにくいようなことや、知っておいたほうがいいことなどを解説した本『身近な人ががんになったときに役立つ知識76』の中では、治療や病院選びのほかに、こうした公的な保障についても詳しく解説しています。
この連載では、その本の中から気になるところを、再編集して紹介していきます。

がんになって障害が残ったら<br />「障害年金」を申請できる

障害年金3級であれば
働いていても認められることも!

 がんでも「障害年金」がもらえる?

 健康保険から傷病手当金をもらえるのは、最長1年6ヵ月(法定給付の場合)になります。これを過ぎても病気やケガが治らず、体や心に障害が残った場合は公的な年金保険から「障害年金」を受給できます。
「年金」というと老後にもらうものというイメージが強いかもしれませんが、障害年金はが、仕事を持っている人など、若い人も受給できます。

 障害年金がもらえるのは、その障害の原因となった病気やケガで、はじめて医師の診察を受けてから原則的に1年6ヵ月たっても回復が見込めず、症状が固定した場合です。初診日から1年6ヵ月たっていなくても、それ以上の改善が見込めずに治療が終わると、その時点で障害認定が行われます。たとえば、喉頭がんで喉頭全摘をした場合は、手術した日が障害認定日になり、障害年金が受給できます。

 職業に関係なくもらえるのが、障害基礎年金で、金額は1級が97万5125円、2級が78万100円で、いずれも子どものいる人には加算があります。
 会社員の人には、このほかに障害の程度に応じて1級、2級、3級の障害厚生年金が上乗せされます。障害厚生年金は、平均月収と勤続年数によって異なりますが、勤続年数が短くても58万5100円が最低保障されます。また、がんになって退職をしても、発症時に厚生年金に加入していれば、厚生年金加入者として申請ができます

 障害認定を受けるのは要件が厳しいものですが、「抗がん剤治療による倦怠感が強くて働けない」「がんの手術後、日常生活のほとんどに家族の介助が必要」といったケースでは、障害年金を受け取ることも可能です。
 がんで障害年金を受け取るための目安は、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」に定められており、日本年金機構のホームページでも見られます。3級であれば働いていても認められますが、申請をしなければ認定は受けられませんので、まずは相談することが大切です

がん診療拠点病院の「がん相談支援センター」の一部にはがん診療でもらえる公的年金について詳しい社会保険労務士もいますので相談してみることをお勧めします。(→がん診療拠点病院についての解説ページはこちらhttps://diamond.jp/articles/-/111135