泥棒市では風邪薬から
勃起薬まで手に入る!

 そんな会話をしていると、病院で処方された薬ばかりと思われる薬品各種を並べ出す露天商が現れた。その品を見ると、「ロキソニン(鎮痛剤)」「PL(風邪薬)」などに交じって、「タダラフィル」という薬も並んでいた。これを記者が手に取ると、店主がすかさず語り掛けてきた。

「それか?バイアグラみたいなもんやな。効能はいっしょやで。(生活)保護受け取る奴がやな、病院で『小便が出にくい』ゆうたら、まず『前立腺肥大』ちゅう診断が下される。それで処方された薬がコレちゅうわけや。2000円でええで。元気なるで!」

 ロキソニンは500円、PLは800円。これら病院で処方される薬品の仕入れ先は「すべて生活保護受給者だ」(西成を根城にする露天商)という。医療費・薬代無料の生活保護受給者のなかには、小遣い欲しさに病気でもないのに病院を受診、そこで処方された薬品を転売する。こうして正規の医薬品が泥棒市に並ぶのである。

 朝5時過ぎ、泥棒市をひやかすことなく、パリッとアイロンを効かせた作業服を着た人たちが、センターや新今宮駅の方向へと歩いていく。彼らは何者なのか。露天商に風邪薬を買い物に来たという路上生活者(60代)が教えてくれた。

「あれは、“白手帳持ち”やな。手に職のある職工が多いんや。ご苦労さんなことやで……」

一般土工のみならず、手に職を持つ「白手帳持ち」ですら、十分に報われる給与額とはとても言えない。

 ここ西成では、「日雇労働被保険者手帳(通称・白手帳)」を持つ労働者は、もっとも尊敬される存在だ。彼らの多くは長年現場で地道に働き、電気工、給排水衛生工、昇降機工、空調工…と、何がしかの専門性高い技術を身に着けている。

 だが路上生活者たちは、心なしか投げやりな物言いで白手帳持ちを語る。それもそのはず、西成の超・エリート、白手帳持ちですら、その給与額は決して高いものではなく、彼らの真面目な仕事ぶりが十分に報われることがないからだ。

 ここ10年で「高くても1万5000円だった」(日雇い労働被保険者手帳を持つ日雇い労働者・50代)という白手帳持ちの職工の給与は、今では平均して日給1万2000円くらいだという。

 朝5時にマイクロバスに乗り建設現場などに赴き、概ね7時から日が暮れるまで作業に従事する。昼食時に1時間、午前と午後にそれぞれ15分程度の休憩があるものの、体力的にはとてもきつい仕事だ。