東日本大震災の発生後、為替相場は乱高下となっています。
私は足元の為替の動きについて、「パニック相場」というキーワードと、「重大事件後の相場」といった2つのテーマに注目しています。
その上で、もしかすると、2~3カ月以内に「米ドル安・円高」基調の完了を確認するような動きが見られる可能性もあると思っています。
1週間足らずで5円以上も急変動した米ドル/円
3月11日(金)の大地震発生後、発生直後は少しだけ円安方向に振れましたが、その後は円高が進みました。
円は17日(木)早朝に、1995年4月19日に記録した1ドル=79.75円という最高値を更新すると、一気に76円台まで円一段高となりました。
しかし、3月18日(金)にG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)が緊急声明を発表し、1995年以来、16年ぶりとなる円売り協調介入が実現したことから、円は一時82円近くまで円安方向へと値を戻しました。
米ドル/円 4時間足
このように、わずか数日で76~82円といった5円以上のレンジを急変動する展開となったのですが、この先はどうなるでしょうか?
ここ数年の代表的な「パニック相場」を見てみると…
この先の値動きを考える上で、「パニック相場」という1つのキーワードに注目してみたいと思います。
3月17日(木)に、米ドルが対円での史上最安値を更新した後の急落で、この日の米ドルの最大下落率は4%以上に達しました。これを受けて、豪ドルなどの一部のクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も記録的な急落となり、まさに「パニック」が起こったわけです。
さて、今回起きたような、米ドルが対円で1日に4%以上もの急落となる「パニック相場」は、ここ数年で何度か起きています。そして、その「パニック相場」は、結構似た動きとなっていたのです。
ここ数年の代表的な「パニック相場」の1つが、日本のゴールデン・ウィーク明けに起こった2010年5月6日の値動きでしょう。この日、米ドルは対円で最大6%以上の急落となりました。
そして、もう1つの「パニック相場」は2008年10月24日に起こったものです。この日の米ドルの対円最大下落率は、なんと7%以上に達しました。
資料1
前述した2つの代表的な「パニック相場」が起きた後の米ドル/円のグラフを重ねたのが「資料1」ですが、結構似ています。
米ドルは「パニック相場」で急落しても、すぐに急落前の水準まで値を戻していました。
ただ、それ以上の水準へと反発を続けるわけではなかったのですが、それでも急落後の安値を更新するのは30営業日以上、つまり、1カ月半から2カ月もかかっていたのです。
「パニック相場」のアナロジー
さて、先ほど述べたように、今回の「パニック相場」も、その翌日にG7による緊急声明の発表と協調介入があったことから、すぐにパニックが起こる前の水準を回復しました。
しかし、「パニック相場」がすぐに元に戻るというのは、じつは「パニック相場」の典型的なパターンでもあるのです。
ちなみに、2008年と2010年に「パニック相場」が起きた際も、米ドルがその直後に元に戻るきっかけとなったのも、G7の緊急声明でした。
さすがに1日に5%以上も米ドルが急落すると、「過度の変動、無秩序な動き」としてG7も緊急的な対応を行い、それをきっかけにいったんは元に戻るということでしょう。