トヨタのコンパクトSUV、C-HRについてはプロトタイプの試乗記を既報ずみ。さる2016年12月に発売された市販版は期待を裏切らない出来のよさだ。
観た目は若者向けのようなアグレッシブさを感じる。前後とも大きなフェンダーのふくらみが強調され、全長は4.3メートルほどだが存在感はおおきい。
自分には少し派手ではないかと敬遠する向きもあるだろうが、しかし、運転すると乗らないでいては損すると思えるほどいいクルマなのだ、これが。
乗らないと、というのには理由がある。安定した感覚の走りと、ハンドルを切ったときの車体の動きのよさと、乗り心地のよさと静粛性の高さ。それはバランスの高さは特筆ものなのだ。
「会心の出来」とトヨタ自動車の開発責任者が胸を張るだけあって、総合得点はかなり高いものをあげたい。同じプラットフォームを使う現行プリウスもいいクルマだけれど、C-HRはさらに上を行っているといえる。
日本仕様は1.2リッターガソリンエンジンにオンデマンド型4WD(ふだんは前輪駆動で必要なときだけ後輪も駆動)のモデルと、1.8リッターハイブリッド(前輪駆動)の2本立て。
ともに悪くないがこのクルマのハンドリングをより楽しむならパワフルなパワートレインが好ましいので、どちらかというとハイブリッドがお勧めだ。
欧州では前輪駆動に2リッターエンジンの組み合わせ仕様があるとのことで、それは興味を惹かれる。少なくとも1.5リッターエンジンぐらい試してみたい。
そう思わせる走りのよさが特徴なのである。
C-HRの仕上がりのよさは、冒頭に触れたようにトヨタのクルマづくり改革の成果のようだ。トヨタニューグローバルアーキテクチャー(TNGA)と名づけられた開発プログラムによるもので、社内横断的に協力しあってのクルマづくりだという。
運転した印象をひとことで言うと気持ちよさだろうか。意のままにクルマを走らせられる感覚はドイツ車に勝るとも劣らない。
C-HRはじつはトヨタ自動車の世界戦略車で、日本と豪州向けいがいはトルコの工場で作られて世界約50カ国に輸出される。
トランプ新大統領は自動車貿易における日米の不均衡を話題にするが、ことC-HRに関してはこんなクルマ、米国では作れないだろう。個性ゆたかな出来だからだ。