顧問税理士への「不満」が後押しに?

 従来の税理士は、書類の作成や税務代理、税務相談に乗るなど、計算機と税務知識・経験があれば十分に機能するIT技術とは少し縁遠い仕事だった。そんな中で、高島氏はなぜクラウドコンサルティングを始めたのか。

高島 私は以前、コンサルタントとして事業再生を担当していました。ヒト・モノ・カネが不足する中小・零細企業のためには、ITを活用した業務効率化の仕組みが必要と考え提案していたのですが、事業再生中の経営者は前向きな話にあまり乗ってくれません。そこで3年前に福岡で独立し、しばらくは私個人で、経営者にクラウド会計やその他のクラウドサービスを活用した業務効率化を提案していました。クラウド会計で記帳や仕訳ができる時代に、税理士が記帳代行をメインの仕事にするのはナンセンスだと思っていまして、クラウド会計を使って自計化してもらうことを提案してきました。

地方の小さな企業こそクラウド会計の導入が効く!米津良治(よねづ・りょうじ)
1983年生まれ。上智大学法学部卒。税理士。税理士法人ファーサイト・パートナー。上場企業にてIR職、経理職等を経て現職。企業勤務時代に社内横断の業務プロセス改善プロジェクトの中心メンバーとして活動したことをきっかけに、業務効率化にこだわりを持つ。早くからクラウド会計の優位性に着目し、研究を開始。わずか1年で30社以上のクライアントにクラウド会計を導入した実績を持つ。

米津 興味を持つ経営者も多かったのではないですか?

高島 はい、そうですね。ただし、1つ大きな問題があることがわかりました。経営者がクラウド会計導入に乗り気になっても、顧問の会計事務所の税理士から「危ないからやめたほうがいい」とストップがかかることが、非常に多かったのです。

土井 それは極端な意見ですね……。我々の書籍『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』でも、税理士がクラウド会計を利用するメリットをたくさんあげていますが、その税理士がクラウドについてよく知らないだけなのでは? 

高島 そうだとしても、経営者が信頼するのはやはり顧問税理士の先生なんです。その壁を打破するためには、個人の専門家ではなく会計事務所として活動する必要性を痛感し、友人の会計士と一緒にこの会社をつくりました。今は地元の商工会のほか、クラウドサービス会社と提携してセミナーを開催し、クラウドサービス全般の普及に努めています。

「地方の小さな企業」の事業継承をラクにする

土井 そうしたセミナーには、どのような方が集まるのですか?

高島 当初は、ベンチャー企業の若い人が中心になるだろうと予想していました。しかし、フタを開けてみると、今の顧問税理士に不満をもっていて、会計事務所の乗り換えを検討しているケースがほとんどだったのです。そして、若い人ではなく、ご年配の経営者もとても多いのは想定外でした。先日、地方紙で経営のクラウド化についてインタビューを受けた際も、掲載後すぐに電話がかかってきたのは70歳を超えた経営者の方でした。

土井 なるほど。それこそヒト・モノ・カネに深刻な悩みを抱えている地域に根付いた老舗企業の経営者などは、クラウド会計の利便性に興味を持ってくれるかもしれない。