その最後で、卓袱台(ちゃぶだい)をひっくり返すようなことを言いますが、今も若手は、職場で育っています。個人差はありますが、先に述べたように職場以外のところでは育たないのです。
なのになぜ、「若手がなかなか育たない」と感じてしまうかというと、どのように育て/育つかというイメージなり基準が曖昧だからではないでしょうか。そこを決め、職場で共有することなしに、育たないのは若手がダメなせい、と断じてしまうのは、あまりに若手が気の毒です。
かつての私たちも、そうだったような気がします。「こいつは、思うように育たないなあ」と上司や先輩が思っているときに、当の私たちは、けっこう手ごたえを感じていたりしたのではないでしょうか。手ごたえを感じながらも、不足部分があることまでわかっており、なんとかしようと足掻いた記憶が、私のなかでは今も鮮明です。
それは言い換えると、成長に対するイメージや解釈が、私たちと若手との間で食い違っていると言うことでもあるでしょう。
このことについては連載の第11回でも取り上げました。
新入社員が配属から数ヵ月で商品説明ができるようになったこと、電話応対がひと通りできるようになったことを誉めたところ、「そんなこと成長でも何でもありません」と言われた経験が私にはあります。
ポテンシャルの高い若手に特に言えそうですが、早く成長したいという気持ちが強いあまりに、一段一段踏みしめながら上がるべきステップに気が付かなかったり、過小に見積もることがあります。「早く間杉さんのように仕事が出来るようになりたいんです」とも言われたのですが、当時の私は社会人20年選手。それを会社に入って半年の若手がモデルにしたって詮無いことです。目標設定、ゴール設定の誤りですし、ロールモデル選定の誤りでもあります。
今も若手は、職場で育っています。よりよく育つために、よき伴走者となり、職場全員が関心を持って若手に関わりましょう。
それが本連載の結論です。
ご愛読を感謝いたします。
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