「経済失政」から生まれた2人のリーダー

一方、トランプ政権は「アベノミクスの第二の矢」、すなわち財政政策によって成長率を一段と高めることを重視している。米国ではすでにインフレ率がプラス2%に近づいていることから、FRBは金融引き締めへと転換しつつある。そして、金融面でアクセルを弱める分、経済成長が失速しないように、しっかりと財政政策で手当てをするという方向に舵を切りつつあるのだ。

ここで思い出したいのが、2016年G7(伊勢志摩サミット)での安倍首相の問題提起である。安倍首相は「先進諸国が協調して財政出動を行うことで、世界経済の成長を支えていくこと」を提案していた。財政政策により経済を伸ばしていこうとするトランプ氏は、まさに日本がリードする財政政策シフトの枠組みに乗っていると見ることもできるのだ。

そもそも、政権の誕生経緯からして、安倍政権とトランプ政権はきわめて似ているのかもしれない。デフレを放置し、緊縮財政を推し進めてきた日本の民主党政権(当時)、経済面での無策を続け、増税や社会保障のコストを国民に押しつけてきた米国・民主党のオバマ政権―両者はいずれも、経済失政を繰り返し、国内の雇用環境改善に尽力してこなかったという点では共通している。

そうした状況に不満を持った国民の声を受けて、経済を成長軌道に乗せる具体的政策を打ち出して政権交代を実現したのが、自民党・安倍政権であり共和党・トランプ政権である。これこそが日米の経済状況を正しくつかむうえで、最もシンプルかつ最も強力なフレームだろう。