「保護貿易」は米国を貧乏にする

トランプ氏が掲げる経済政策のうち、投資家目線でもマクロ経済環境の観点でも望ましいものはたくさんあるが、懸念すべきものがいくつか含まれているのも事実である。議論の公平性を保つためには、彼の保護主義的スタンスを正面から取り上げておく必要があるだろう。

最も心配されているのが、メキシコ・中国に対する関税引き上げ、TPP交渉からの撤退といった通商政策である。企業の貿易や対内外投資活動を抑制する政策は、経済成長率を抑えつける愚策としか言いようがない。万が一、選挙期間中に語っていたような大幅な関税引き上げをトランプ氏が実現させれば、これは通商相手国であるメキシコや中国だけではなく、米国民の生活水準を低下させる作用を持つ。政権基盤を揺るがしかねない危険な結果を招くだろう。

自由貿易、そして国境を超えた企業の投資活動は、相手国だけでなく自国の経済にとってもメリットが大きい。貿易赤字というフレーズを聞くと、どうしても相手との取引のなかで損をしているかのような印象を受けるかもしれないが、じつは自国経済の豊かさとはまったく関係ない。

貿易赤字とは相手国からの輸入のほうが多いことによる「結果」に過ぎず、自国経済の消費の底堅さを物語るものである。実際、相手国からの輸入によって国内に割安な製品が広がれば、消費者にとっての効用(豊かさ)は高まる。つまり、貿易赤字であることと、国民の生活水準が上がることとは矛盾しないのだ。