(4)現場の優れた人物を左遷する、肩書が上の人間の責任を追及しない

 ガダルカナル島をめぐる補給作戦に従事した田中頼三海軍中将は、米重巡洋艦部隊と遭遇したルンガ沖夜戦で、不利な形勢から大勝利を収めた優れた指揮官でしたが、指揮官先頭など海軍の伝統的な指揮方法を踏襲しなかったことで、戦闘の翌月には司令官を解任されてしまいます(逆にアメリカ側は、田中中将を“不屈の猛将”と高く評価していた)。

 一方の米軍は、第1次、第2次ソロモン海戦で消極的な指揮が目立ったゴームリー中将を解任し、猛将ハルゼーを司令官に任命。結果、第3次ソロモン海戦では米軍が圧勝し、猛将ハルゼーは米軍が日本に勝利する立役者の一人となりました。

 愚かな人事により、日本は現場の優秀な人材を左遷し、米軍は無能であれば方面軍司令官さえ即断で更迭しているのです。両軍の戦果が逆転するのも当然といえるでしょう。

(5)戦闘の第2ラウンド、第3ラウンドの想定をしない

 戦史を見る限り、戦闘はたった一回の勝敗で終わることはなく、一時的な敗戦をした側は、屈辱の中で勝者に対抗する策を準備して、リベンジの戦闘を仕掛けることが通常です。

 簡単に言えば、戦闘には第1ラウンドだけではなく、第2ラウンドがあり、場合によっては第3ラウンドがあるのです。

 ところが日本軍は、たった第1ラウンドに勝利しただけで驕慢の傾向を持ち始めていることが感じられます。ミッドウェー海戦に至るまで予想外の勝利を積み重ねた日本軍は慎重さを失い、過剰な自信を持ち始めています。その驕慢さが油断を生み出し、以降は転がり落ちるように敗北を重ねます。

 では、戦闘の終局とは一体どんな場面でしょうか?

 戦闘の終局とは、相手がもう反撃できない状況だと考えるといいでしょう。米軍は日本軍の資源物資補給を絶ち、物理的に反撃できない状況に日本を追い詰める形で最終的な勝利を収めています。

 戦争もビジネスもこの点は共通しており、第1ラウンドでは製品販売に勝利しても、ライバル企業は必ずあなたの会社と製品を研究し逆襲を仕掛けてきます。したがって、第1ラウンドの勝利で油断することなく、最終ラウンドでの勝利を目指す企業だけが王者となれるのです。

(6)情報の徹底的な軽視が生む、非現実的な楽観主義

 太平洋の覇権をかけて戦ったミッドウェー海戦の直前、日本海軍の暗号を100%解読することに成功していた米軍は、急遽空母を同島周辺に配備します。同時にレーダーにより日本軍の航空部隊を察知し、島内の航空戦力を退避させることで無傷で温存することに成功します。

 一方、日本軍は情報を軽視したり直視することができず、結果的に敗北の大きな要因につながっています。ガダルカナル作戦では、確認せずに米軍の上陸部隊を少数(実際は1万3000名以上)と誤認。この情報の軽視によって、900名の日本軍先遣隊は米海兵隊との戦闘に向かい、壊滅しました。

 情報を軽視することで、ライバルに後れを取り、情報を直視しないことで現実の認識が過度に(非現実的なほど)楽観的になる。情報を冷徹に受け入れないことで、過剰な精神論に冒されていくことも日本軍と現代日本人に共通の弱点だと言えるのではないでしょうか。