ターニングポイントに至る、
日本軍と米軍の学習過程、6つの違い
それでは、ガダルカナル島における作戦において、日米両軍の明暗を分けたのは、一体どんなことだったのでしょうか?ガダルカナル島を巡る一大消耗戦闘と敗北に至るまでの道筋などから、日米両軍の学習過程の差を「6つのポイント」としてまとめてみます。
ただ、あらかじめお伝えしておきたい点として、日本の大東亜戦争における敗因とその解釈には様々な意見があり、下記はあくまで『失敗の本質』をもとにした、筆者の一見解であることを先にご理解いただければ幸いです。
(1)「戦術」で勝って「戦略」で負ける
第1次ソロモン海戦では、三川軍一中将の日本艦隊は米軍の艦隊に圧勝しますが、本来の作戦目的であった「敵輸送船団の殲滅」を果たすことなく帰還してしまいます。
その結果、米海兵隊は大量の物資、大砲などの武器補給を受け、日本陸軍の上陸部隊が多大な犠牲を払いながらも最後まで勝つことができない遠因となりました。
一方の米軍は島の飛行場を最初に奪取し、航空攻撃で日本側の輸送作戦をことごとく撃退するなど、「戦略的に優れた戦闘」を進めていきます。これは戦術では勝っても、戦略では負ける日本軍の戦い方をまさに象徴しているといえるでしょう。
本来、最終的な勝利につながる戦い方を考えるのが「戦略」ですが、日本軍には戦略という発想より、各戦闘でいかに戦うかという「戦術」を優先する傾向がありました。
(2)現実を自分に都合よく解釈する、戦果を誇大認識する
戦後のさまざまな資料を見る限り、日本軍内で報告される戦果の多くは、実際の米軍の損害よりも過多に見積られているケースが多く、上層部でも都合のいい解釈が横行していました(この油断がのちの敗北を生みます)。
一方の米軍は、珊瑚海海戦までの日本海軍の零戦による被害を直視し、具体的な対応策が決まるまで、零戦との一対一での戦闘では「逃げてもいい」と味方パイロットに通達しています。その上で、鹵獲(ろかく)した零戦の徹底分析を行うことで弱点を的確に探り出していくことになります。
現実を冷徹に受け止めて対策を施す側が最終的に勝利を手にすることは、現代ビジネスでもまったく変わらない真理でしょう。
(3)リスクや脆弱性から目を背ける
被害艦船では日本軍が勝ったはずの珊瑚海海戦では、それまで日本側が体験したことがないほど、多くの熟練パイロットが撃墜されました。
これは米軍の新兵器であるレーダーが登場したことに理由があったのですが、日本軍は勝利の内側にある「劣化」を探求せず、被撃墜率の急激な上昇の原因究明もしないまま、戦闘法の改善なく進んでいきます。
第1次ソロモン海戦では、夜戦で敵戦艦を巨大なライトで照らし砲撃する「照射砲撃」の危険性が日本軍内では認知されずに終わり、以降の夜戦での日本軍艦艇の損害拡大につながります。
逆に米軍は、珊瑚海海戦などで日本軍の戦闘機により正規空母が撃沈されたことを受け、以降空母の防弾・防火装備を徹底させる改善を行います。
リスクと脆弱性から目を背け、つかの間の勝利に酔いしれた日本軍と、リスクを探り当てて対策を早く施した米軍の行動は、その後の運命を暗示しているかのようです。