組織としての学習能力、
問題解決力の差が勝敗を左右する
戦局のターニングポイントとなったガダルカナル作戦。その戦いにおける6つの敗因をあげましたが、ガダルカナル島での海戦と陸戦では、俯瞰的に見ても大変残念なことが浮き彫りになります。
それは、日本軍と米軍の「組織的な学習能力」の違いです。具体的には、第1次ソロモン海戦で米軍は大被害を受けたのち、戦闘方法を改善することで、日本艦隊の夜襲を防ぎながら、最後の第3次ソロモン海戦では、日本海軍を圧倒する形で勝利を収めます。
ところが陸戦において、日本軍先遣隊は米海兵隊との最初の戦闘で全滅したにも関わらず、以降の第1回総攻撃、第2回総攻撃も同じような戦法で行ったことで、甚大な被害を生みながら飛行場を最後まで奪回できず、撤退を余儀なくされているのです。
オーストラリア北東に位置するガダルカナル島。その島を巡る日米軍の約半年間にわたる激しい戦闘は、そのまま両陣営の組織的学習能力と問題解決力の差を見せつける結果となったのです。
現代日本に求められる、
環境変化に勝てる組織3つの特徴とは
ガダルカナル島を巡る一大消耗戦で膨大な戦力を喪失した日本軍は、その後太平洋の各島で米軍に圧倒され敗北を重ねます。インパール作戦、レイテ海戦が行われた1944年頃には、もはや戦争の勝算というものが存在しない状況で戦闘を重ねていたと推測されるのです。
戦局の推移から見えるのは、加速度的に日本軍の戦法を学習することで対策を徹底して勝利する米軍と、初期の成功体験や硬直した上層部組織の構造から、変化に追いつけずに敗れる日本軍の姿です。
戦争とは1回の戦闘で勝敗が決まるものではないので、戦局の中から効果的な戦略を新たに生み出せる組織こそが最終的な勝利を手にすることができます。その意味で、日本軍は残念ながら、戦局の変化に応じて組織として学習できたとはいえません。なお、戦史と『失敗の本質』から導き出せる、戦略的に優れた組織の3つの特徴とは以下のようになります。
(1)主観に溺れず、現実への合理主義を徹底できる組織
(2)上層部の思い込みではなく、最前線から勝機を発見できる組織
(3)新たな概念の導入、優れた人材の抜擢など、変化を誘発し続ける組織
劇的な環境変化に囲まれている現代日本において、組織として戦略的に変化に対応するための学習が、何より求められています。私たち日本人は、名著『失敗の本質』をさらに深く読み解き、敗戦という歴史上最大の失敗から、日本人が陥りやすい組織的特性について今こそ学ぶべきときに来ているのです。
※繰り返しとなりますが、大東亜戦争の日本軍の敗因については様々な解釈や指摘がされています。上記は組織・戦略論の視点から見た筆者の一解釈であることをご理解ください。よろしくお願いします。
※この記事は、2012年4月10日に公開された記事を一部加筆修正したものです