「うちだけのメニュー」で勝負

 トロ函のメニューのうち、ほとんど全員の客が頼むのは活貝浜焼き盛り合わせ(ホタテ、サザエ、ハマグリ)1186円、ぶっかけ三点寿司(ウニ、イクラ、カニ)1186円、トロ鮪切り落とし754円だろう。特に貝はそれがあるだけで気分が盛り上がる。目の前で焼けていく貝を眺めながら焼酎を飲んでいると漁師になったとは言わないが、少なくとも漁業関係者になった気分にはなる。

 コンロに載せた貝焼きにぴったりの酒はホイスハイボール410円。ホイスとは焼酎の割り材でホッピーみたいなものだけれど、味はやや甘めだ。置いている店は少ない。幻の酒と言われるくらいである。ホイスの甘みに焼き貝のしょっぱさが合う。

 ただ、貝焼き、刺身、寿司といったメニューは、なんとか水産にもある。トロ函でしか食べられないもの3つを挙げると、貝盛りウニの炙り1078円(ウニ2個)、鮪もつ煮込み430円、サッポロ一番海鮮塩ラーメン430円だろう。

 ウニの炙りはハマグリの貝殻に蒸しウニがこれでもかと詰め込まれている。ひとつあればふたりで食べられるから、1人前を4人で楽しむことができる。わたしならば貝焼きよりも、こちらを頼む。

 鮪もつ煮込みは他の店でもあるけれど、たいていはにおいがきつい。トロ函のそれは品がいい味だ。わたしがもっとも評価したのはサッポロ一番海鮮塩ラーメン。インスタントラーメンに海老とゲソとキャベツが入っているだけのもの。アルマイトの鍋に入って出てくる。安っぽいけれど、胸にグッとくるうまさだ。麺を食べた後、ライスをもらって、鍋に投入。インスタントラーメンの残りスープで作った雑炊はふぐ鍋の後の雑炊と並び立つうまさである。

 新町氏は接客をしながらも常連客からかかってきた電話に出る。

「ありがとうございます。またよろしく」といったことをしゃべっているかと思ったら、そうではなく、「あなたね、僕が紹介した人と仕事をするなら、ちゃんとしなきゃね」などと叱責していた。彼は言う。

「ついつい、いろんな相談に乗るんですけれど……。仕事というよりも性分ですね」

 わたしが店を出ようとしたときも、「また来てください」ではなく、「赤羽にはおいしい店がたくさんありますから、こんどはそっちへ行ってください」と言いながら、同業の店をいくつも挙げた。面倒見のいい人なのである。


「赤羽 トロ函 (トロバコ)本店」

◆住所
東京都北区赤羽1-17-7
※JR赤羽駅から徒歩2分
◆電話
050-5868-0507 (予約専用番号)、
03-3903-7175 (お問い合わせ専用番号)
◆営業時間
17:00~23:00(月~金)、
日祝は14:30~23:00、年中無休