これは、従来の日米経済関係と方向性が「真逆」なのではないだろうか。この連載では、日本が高度経済成長を成し遂げたのは、米国が東西冷戦期に日本を成長させるために、日米安保条約に基づいて日本の安全保障を肩代わりし、日本の製品をどんどん購入してくれたからだと指摘してきた(第145回・p3)。

 要は、「日本はアメリカに食べさせてもらって大きくなった」というのが、日米経済関係の基本的な構図だったということだ。また、これは日本だけの話ではない。第二次世界大戦後のパックスアメリカーナの下で、世界中の途上国が、米国に製品を買ってもらって成長した。韓国、台湾、ASEAN、メキシコ、南米、そして中国も、米国への輸出に依存して成長してきたのだ。換言すれば、米国のような、いわゆる「大国」の条件の1つは、「他国を食べさせる」ことなのである。

 ところが、トランプ大統領の登場で、米国が「世界の警察」をやめ、世界中の国からモノを買うのをやめるという。「他国を食べさせる」という大国の役割を放棄するというのだ。それどころか、他国の企業に対し、米国内で生産し、雇用を増やすことを要求している。つまり、米国が他国に対して「食べさせろ」と言い始めたということだ。

 この連載では、トランプ大統領を「戦後、初めて日本の『完全独立』を容認する大統領」となるかもしれないと評したことがある(第145回・p5)。しかし、安全保障に関しては、日米関係は強化する方向となり、日本の「完全独立」は起きそうにない。だが、経済問題では様相は異なり、日本が「米国に食べさせてもらう」という、いわゆる「途上国」の立場だったのが、「米国を食べさせる」という「大国」の立場になる、逆転現象が起きつつあるのかもしれない。

トランプ政権とシリコンバレーの
摩擦解消に一役買う

 現在の国際情勢は、日本を「極東の一小国」に落としかねない厳しいものだといえる。だが、経済問題における逆転現象からいえることは、知恵を絞って行動すれば、日本にとって好機となり得るということだ。

 では、今後日本がどう行動すべきか。とりあえずは、米国のリクエストに応じて、日本が高い競争力を持つ自動車産業や、新幹線の建設などで、米国に雇用を生み出して「食べさせる」ことが重要だ。しかし、大事なのはその後だ。

 かつて米国が、製造業で日本など途上国から商品を買い、経済成長を支えながら、一方でIT産業など新しい産業を次々と生み出していったことに着目すべきだろう。換言すれば、常にイノベーションを繰り返し、新しい産業が生まれ続けたからこそ、米国は「途上国」を食べさせ続けることができたのだ。

 日本でも、米国の要求に応え続けるには、輸出産業だけに頼ってはいけない。産業構造改革を断行し、「新しい成長産業」を生み出すことが大事になる。そこで注目すべきは、米国のIT、人工知能などの最先端のテクノロジー企業である。