衰退したとはいえ、ロシアも確固たる「生存圏」を持つ国だといえるだろう。これに対して、EUはNATO軍を持ち、安全保障面では高い自立性を持つが、資源については再生エネルギーなど多角化を図ってはいるもののロシアへの依存度が高い。「生存圏」という観点では弱みがある。

 巨大な「生存圏」を持つ国が、「ブロック化」に動けば、資源も食料も防衛力も自立できない日本のような国はなすすべがないことを、我々は自覚しなければならない。安倍政権が、ロシアとの関係強化に前のめりになるのも、TPPの国会承認を急ぐのも、米国が「孤立主義化」、世界の「ブロック化」が進むことを見通しての動きだろう。

 いわゆる「トランプ・ジョンソン現象」は、英米両国にポピュリストが偶然台頭したという話ではなく、世界中で起こっている、時代の大きな転換点の中での現象だと考えるべきなのである。

米軍撤退による日本の
「自主防衛」は「負け組」への道

 この連載では、12月に開催される日露首脳会談について、「負け組同士の歩み寄り」と表現した(第142回・p5)。なぜ日本が「負け組」になるのか。トランプの日米関係についての発言から考えてみよう。

 (もし中国などが日本を攻撃したらどうするかという質問に)「アメリカが一歩引いても、日本は自ら防衛できるだろう。日本は中国との戦争に勝ち続けた歴史がある。なぜ、アメリカは日本を守ってやっているのか?ご存じの通り、日米安保条約は心憎い。なぜなら、他国がアメリカを攻撃しても、日本はアメリカを助けなくてよい。なのに、他国が日本を攻撃したら、アメリカは日本を助けなければならない」

 つまり、日米安保の「片務性」を批判している上に、中国が日本を攻めてきても、日本は自分で防衛できると主張しているのだ。

 トランプ氏の大統領選中の様々な発言については、選挙で勝つのが目的のものなので気にする必要がないとか、そもそも実情を理解していない荒唐無稽なものなので、大統領になっても実現不可能だという見方がある。しかし、「米軍の日本からの撤退」というのは、「常に最悪を想定して準備すべき」という国際社会の常識から考えれば、無視できないものだ。

 そもそも、バラク・オバマ現大統領も、2013年9月に対シリア内戦への軍事不介入声明を発表した際、「もはやアメリカは世界の警察官ではない」と宣言し、中東からの米軍撤退、将来韓国からの米軍撤退(公表)、2020年から2026年の間に沖縄から海兵隊を含む全米軍撤退(非公式)、NATO(北大西洋条約機構)の閉鎖又は欧州中央軍への統合、中南米、アフリカ地域からの米軍撤退等々を打ち出している。「世界の警察官を少しずつやめていく」というのは、米国内で党派を超えたコンセンサスだといえる。