異文化対応力と伝導力

(1)異文化対応力
 「異文化対応力」とは、異文化環境下で仕事をするために必要なコミュニケーション能力です。もちろん、最低限の語学力は必要ですが、語学力だけというわけではありません。

 良い人間関係を構築するために、職場の人と積極的にコミュニケーションを取る力や、日本の商慣行を含めた日本文化を理解してもらう力、外国人とも偏見なくコミュニケーションを取る力がなければ、次に説明する(2)伝導力も(3)基本仕事力も発揮することができません。

 おそらく、多くのグローバル人材育成施策は、この「異文化対応力」を身につける目的で行われているように思われます。確かに「異文化対応力」は、研修などによってもある程度、開発可能なところがありそうですので、赴任前から機会を用意して、高めておきたい力と言えるのではないでしょうか。

(2)伝導力
 実は「異文化対応力」以上に重要な力が、この「伝導力」です。「伝導力」とは、要するに「わかりやすく説明する力」です。なぜ、海外で伝導力が重要なのでしょうか。

 この調査をやっていく過程で、多くの海外で活躍していた日本人マネジャーや技術者の方々にヒアリングを行ったのですが、よく耳にしたのがこのような言葉でした。

「現地の人は、『こいつ何者だ?』という目で見ています。自分の武器(業務経験)がなければ、受け入れてもらえません」「日本人はものを教えてくれる、と思われています。この日本人につけば自分の能力が伸びる、と思うから現地の人がついてくる」「日本人は上司がダメでもポジションでついてくるが、海外は違う。すぐに見限られる」といったものです。実際に、赴任してわずか7日で現地スタッフから見限られてしまった、という話も耳にしました。

 このように、語学というハンデのある海外では、どうやら自分の業務経験やノウハウを教える力、「伝導力」が武器になるということなのです。そのためには、自分の業務経験を他人にわかりやすく教えられるように自分の中で棚卸しをしておく必要があります。そして、自分の中に引き出しを増やしておくために必要なのが、次の(3)基本仕事力ということになりそうです。